最新記事
SDGsパートナー

環境貢献度の可視化が「重要な一歩」...ストレージ王が描く循環型トランクルーム業界の未来

2025年10月16日(木)10時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

ストレージ王の「袋井湊トランクルーム」

袋井湊トランクルーム

数字が「本質的な価値」を示す

サプライチェーンにおける温室効果ガス(GHG)の排出量を捉える国際的な基準として、「スコープ(Scope)」がある。

スコープでは、モノがつくられてから廃棄されるまでのGHG排出量を、大きく3段階に分けて捉えている。1つ目は自社が直接排出するGHG(スコープ1)、2つ目は自社が間接排出するGHG(スコープ2)、3つ目は原材料の仕入れや販売後に排出されるGHG(スコープ3)。これに加えて、GHGの排出量ではなく「削減量」を評価する「スコープ4」が基準として広く知られている。

ストレージ王がこの基準に従い、スコープ1から4までを含む包括的な算定を実施したところ、谷在家のコンテナの再利用によるCO₂の純削減量は6万4334.7キログラムにのぼった。これは乗用車約17台の年間CO₂排出量に相当する。

「数字として環境貢献度が明確になったことで、単なる経費削減ではない『本質的な価値創造』を実現できたんだと、大きな達成感がありました」と坂上氏は語る。

スコープ4に分類される、新たなコンテナの海上輸送の回避は特に効果が大きく、1056キログラムの削減に成功していた。

加えて、再利用プロジェクトでは、環境だけでなく地域経済への貢献も意識。再利用前の塗装作業では地元の塗装業者と連携し、環境と経済の両面を配慮する「三方よし」のモデルを構築した。再利用するコンテナの移設作業を担当した企業からは「これは一度使われていたコンテナなんですか? 新品同様にしか見えないですね!」とも声をかけられたという。

今後は再利用可能なコンテナの安定確保の道を探りつつ、2026~2028年度に全国規模での展開と、10万キログラムのCO₂排出量削減を目指す。そのためには、物流コストの最適化や第三者機関による環境効果の検証体制構築も重要だ。

業界全体をリードする存在として、トランクルームの2つの業界団体、レンタル収納スペース推進協議会(RSA)とSelf Storage Association Asia(SSAA)などでも発信を行い、2029年度には他業者との連携による業界標準化とアライアンスの確立、2030年度のコンテナのライフサイクル管理プラットフォームの構築も見据える。

さらに、アジア太平洋地域の事業者とのネットワーク形成により、国際的な再利用プラットフォームの可能性も探る考えだ。

坂上氏は、定量公表という「小さな一歩」が業界を動かす契機になると強調する。数字で裏打ちされた循環の実践は、ストレージ王の事業に「持続可能な資源活用モデル」という新たな価値を与えた。

こうした大きな意味を持つ「小さな一歩」が他業者、他業種へと伝わり、循環型社会の輪が広がっていくことに期待したい。

◇ ◇ ◇

アンケート

どの企業も試行錯誤しながら、SDGsの取り組みをより良いものに発展させようとしています。今回の記事で取り上げた事例について、感想などありましたら下記よりお寄せください。

アンケートはこちら

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の債券価格が下落、1年間の償還猶予要請報道

ビジネス

午前の日経平均は反発、大幅安の反動 ハイテク株の一

ワールド

イタリア製造業PMI、11月は節目の50超え 2年

ワールド

原油先物続伸、米・ベネズエラ緊張など地政学リスクで
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中