最新記事
SDGs

魚のフンで野菜が育つ?...「未来型農業」アクアポニックスとは何か、工場の排ガスも活用可能

FARMING, REIMAGINED

2025年9月4日(木)16時20分
写真:殿村誠士 文:酒井理恵

アクポニ代表取締役の濱田健吾

「自分がやらなきゃ誰がやるのか」と語るアクポニ代表取締役の濱田健吾

すると、徐々に問い合わせが増え、3年後には企業から商業化の話が舞い込んだ。本格始動の前には渡米し、「給料は要らないから」と頼み込んで、住み込み労働者として20カ所の農園を回ったという。

彼をそこまで突き動かしたもの──それは「自分がやらなきゃ誰がやるのか」という信念だった。「日本のものづくり技術は本当にすごい。それを農園の設備設計に最大限活用すれば、どこでも展開可能な循環型農業を確立できるはずだ」と、濱田は言う。


見えない循環を可視化

ふじさわアクポニビレッジのタワー型栽培設備

工業と比較し、農業のバリューチェーンは十分に機能しているとは言い難い。なぜなら「生産」が可視化されていないからだ。

アクポニでは環境データ、人の作業データ、魚・野菜の生体データをデジタル化し自動管理することで品種ごとの最適な生産管理、調達、流通の設計に役立てている。参入業者の95%は農業以外の企業だが、1年以内に自立できるという。

近年増えているのは自動車工場などの「工場併設型」の農園だ。排熱で電気代を抑え、排ガスのCO2も再利用。未利用資源を活用したこの農園で育てた野菜や養殖魚を、取引先へ販売したり社員食堂で提供したりすることで、循環を生んでいる。

「癒やし効果やエンタメ性もあり、小規模でも収益化しやすい」と濱田は言う。「安定供給にはまだ課題があるが、今後も省力化・低コスト・収益性を追求し、産業として定着させるための人材研修や情報発信を戦略的に行う」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾最大野党主席、中国版インスタの禁止措置は検閲と

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ワールド

台湾、中国の軍事活動に懸念表明 ロイター報道受け

ビジネス

市場動向を注視、為替市場で一方向また急激な動きもみ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 9
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中