最新記事
経済成長

「成長神話」の終わり...GDPの3つの限界、その指標は時代遅れか?

THE COST OF GDP OBSESSION

2025年7月2日(水)16時13分
カウシク・バス(コーネル大学教授)
「成長神話」の終わり...GDPの3つの限界、その指標は時代遅れか?

世界中で富の集中が進み、格差が広がっている(インドのムンバイ) ERIC LAFFORGUEーHANS LUCASーREUTERS

<経済成長の象徴とされてきたGDPは、いまや格差や民主主義の危機、環境破壊を覆い隠す数字になりつつある。 持続可能性と公正さを軸に、新たな経済指標を模索すべきときに来ている>

主流派経済学では、記述は分析の添え物的な扱いをされるのが普通だ。しかし、ノーベル賞経済学者のアマルティア・センが1980年に指摘したように、記述という行為は例外なく選択を伴う。何を含み、何を省略するかは極めて重要だ。記述は認識を形成し、認識は行動に影響を与える。

一国の経済状況を記述するのは一筋縄ではいかない作業だ。学者たちはかつて、国家間の経済的優劣を議論する長大な論文を書いた。だが、次第に1つの指標が定番になった。それがGDPだ。


GDPとは、一定期間に国内で生産された全ての商品とサービスの付加価値の合計を指す。多少の調整を加えれば、国民総所得に近い値にもなる。経済的幸福度の代名詞に使われることも多い。

イギリスの経済学者ダイアン・コイルが2014年の著書『GDP〈小さくて大きな数字〉の歴史』(邦訳・みすず書房)で述べたように、GDPの登場は経済政策立案の分水嶺となった。

1934年、後にノーベル経済学賞を受賞するサイモン・クズネッツによって開発されたGDPは、政策論争に待望久しい厳密性を持ち込んだ。政治家はもはや、経済的進歩の証拠として高層ビルを挙げるだけでは済まなくなった。

もちろん国連の人間開発指数など、国民の幸福度を評価する方法はほかにもある。だが国同士の経済状況を比較する場合、GDP(または1人当たりGDP)は依然として定番の指標だ。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は小幅続落、様子見で方向感乏しい インバウ

ビジネス

午後3時のドルは154円後半で売買交錯、地合いは円

ワールド

タイGDP、第3四半期は前年比+1.2% 4年ぶり

ビジネス

持続的・安定的な2%達成、緩和的状態が長く続くのも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中