最新記事
SDGs

「企業はどうSDGsに向き合うべきか?」蟹江研究室・久米さくらさんが研究する持続可能性

2025年2月18日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

──学校外での取り組みについて教えてください。

大学で学んだサステナビリティを社会で実装したいという思いが常にあります。例えば、留学前には「食べられるスプーン(エディブルスプーン)」というプラスチックスプーンの代替品となるような商品を販売していました。また、ボストン大学に留学していた際には、幼児向けに環境教育を行うスタートアップ「Idori」に参加していました。

newsweekjp20250213083226-8b468532c5b940165e6262b1156b1d4a5490cdf1.jpg

Idoriのメンバーらと。写真一番右が久米さくらさん

Idoriは、都市部で育つ子どもたちに自然を愛する心を育むことを目的にしたスタートアップです。設立者の学生は、自身が自然豊かな環境で育った経験から、都会で育つ子どもたちが自然に触れる機会の少なさや、自然保護への意識の低さに気づき、この活動を始めました。

具体的な活動内容としては、森林伐採や海洋汚染といった環境問題をテーマにした絵本やぬいぐるみを制作し、実際に現地の幼稚園に読み聞かせに行ったりもしました。例えば森林伐採を取り扱う絵本では、人間が木を切ったことにより住処を失うキャラクターを描き、自然保護の重要性を子どもたちに伝えています。「環境問題」というとハードルが高く聞こえますが、キャラクターを用いたストーリーテリングを通じて、幼少期から自然への関心を育み、将来的な環境意識の向上を目指しています。

現在はゼミ活動が忙しく、一時的に活動を休止しています。ただ、このプロジェクトは都市部の子どもたちを対象としているため、東京での展開にも大きな可能性があると考えています。ゼミ活動が落ち着いた際には、東京での展開を視野に入れて活動を再開したいと思っています。

──久米さんご自身は自然豊かな場所で育ったのですか?

私はドイツで生まれ、幼少期を過ごしました。ドイツは環境先進国ということもあり、幼稚園のカリキュラムに「自然の中で遊ぶ時間」が組み込まれていました。毎日のように森に行き、泥んこになって遊ぶという体験がありました。両親は東京出身ですが、幼少期に体験した自然とその豊かさを失いたくないという思いが、今のサステナビリティへの関心につながっていると思います。

──久米さんにとってSDGsとは?

私にとってSDGsとは、「サステナビリティを実現するための具体的な行動指針」という位置づけです。実際、私がアメリカに留学した際に驚いたのは、SDGsという言葉自体がほとんど認知されていなかったことでした。一方で、ヨーロッパや日本では広く知られていますが、「またSDGsか...」といった抵抗感を持つ人も少なくない印象を受けています。

私自身は、SDGsという枠組みに特別な思い入れがあるというよりも、その背後にある「サステナビリティ」という概念そのものに興味があります。SDGsをすべて網羅することで、世界の多くの課題にアプローチできる点に強く惹かれています。ただし、SDGs単体で捉えるというよりも、もっと広い視野でサステナビリティ全体を見つめることを大切にしています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中