最新記事
SDGs

「企業はどうSDGsに向き合うべきか?」蟹江研究室・久米さくらさんが研究する持続可能性

2025年2月18日(火)13時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

──卒業後のキャリアについてはどのようにお考えですか。

まだ悩んでいるところです。留学前は、コーポレートサステナビリティの分野、つまり企業からサステナビリティを実践する方向性に重きを置いていました。しかし、アメリカで環境政策の授業を受ける中で、ビジネスと政策の間にある溝を感じました。政策側の人々は「ビジネスがもっと動くべきだ」と言い、ビジネス側は「政策が変わらなければどうにもならない」と主張していて、自分がどちらの立場に進むべきか悩む瞬間がありました。

さらに、この夏、蟹江研究室の研究活動の一環で国連の会議に参加したことで、国際機関の役割や中立的な視点の重要性についても考えるようになりました。サステナビリティは非常に広い概念なので、さまざまなアプローチが可能ですが、その中で中立的な立場からどうやって全体を取りまとめるかという視点に興味を持っています。

具体的に、パブリックセクター、プライベートセクター、または国際機関のどの領域でキャリアを築くべきか、まだ明確な答えは出ていません。

ただ、海外の大学院への進学も視野に入れています。「現状を元に未来について考える」という現在進行形の分野だからこそ、日々生まれる新たな規制や基準について学び続ける必要があると感じています。そのため、就職活動と進学のどちらに重点を置くか、引き続き検討しているところです。

──若い人たちへのアドバイスをお願いします。

大学生の立場でアドバイスするのは大変恐縮ですが、私が日々考えていることをお伝えします。SDGsはトレンドやバズワード的に扱われることも多いですが、表面的に捉えるのではなく、その本質や取り組む意義を見出すことが大切だと思います。ただ周りがやっているからではなく、「これに取り組むことでどのようなポジティブな影響をもたらし、どんな未来を創れるのか」を意識することが重要なのかと。

どうしてもSDGsへの取り組みが「何かを犠牲にしなければならない」とネガティブに捉えられがちですが、それでは誰もワクワクしないし、それこそ持続可能とは言えないと思います。むしろ、「これだけいいことが実現できるんだ」とポジティブな側面に目を向け、楽しく取り組める雰囲気が必要だと感じています。

また、SDGsのもう一つの素晴らしい点は、17の目標が幅広い課題をカバーしているため、誰にとっても何かしらの入り口があることです。例えば、自然が好きな人は「気候変動対策」や「海の豊かさを守ろう」といった目標をきっかけに、自分の関心とSDGsを結びつけられるはずです。一度自分にとって大切な課題に目を向け、それを通じて世界の課題を知ることができれば、SDGsは非常に魅力的な枠組みになると思います。

もちろん、すべての人が社会貢献をするべきとは全く思っていません。けれども、一人ひとりが自分にとって大切な問題に向けて、小さくてもいいのでアクションを起こすことで、それが長期的に見れば17の目標全体をカバーする大きな流れになるのではないでしょうか。SDGsをポジティブな方向で捉え、自分らしい切り口で取り組むことで、楽しく前向きに進んでいけると思います。

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日経平均は小幅反発、前日大幅安の反動 戻りは鈍い

ビジネス

米関税の影響大きくなければ「利上げ方向」、見極めは

ワールド

インドネシア中銀、ルピアを1ドル1.63万ルピア前

ビジネス

ユニクロ、8月国内既存店売上高は前年比5.3%増 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中