最新記事
SDGs

目標達成の危機...SDGs進捗遅れ、グテーレス国連事務総長が示す打開策

2024年10月10日(木)15時50分
冨田龍一
アントニオ・グテーレス国連事務総長 REUTERS

アントニオ・グテーレス国連事務総長 REUTERS

<国連本部で行われた「SDGモーメント」では、持続可能な開発目標(SDGs)の進捗遅れが大きな焦点となった。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、目標達成の危機に対して、資金調達、気候行動、平和を柱とする打開策を示した>

9月24日、国連本部で開催されたハイレベルイベント「SDGモーメント」では、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた取り組みが再び焦点に当てられた。貧困の撲滅、不平等の是正、ジェンダー平等の実現、気候変動への対策など、未来を左右する17の目標は、パンデミック、債務危機、そして紛争といった世界的な課題に直面している。このイベントでは、これらの課題を克服し、目標達成に向けた取り組みの加速が呼びかけられた。

SDGs前進に向けた「3つの原動力」

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、SDGsの5分の4が予定された達成軌道から外れている現状に強い警鐘を鳴らしつつ、世界には資金、技術、ノウハウが十分に存在しており、それらを最大限に活用すべきだと強調した。彼は「開発のための3つの原動力」として、資金調達、気候行動、平和の重要性を訴えた。

まず、資金調達の課題について、多くの途上国が増大する債務や非効率な税制によって、保健、教育、食糧など基盤的な投資が阻まれている現状を指摘した。これに対して、国際的な金融システムの抜本的な改革が求められており、特にSDGsを推進するための刺激策の重要性が強調された。

次に、気候行動では、各国のエネルギー政策の見直しが急務であるとされた。化石燃料への補助金を廃止し、炭素に価格を設定すること必要であると指摘された。また、化石燃料の段階的な廃止や、再生可能エネルギー規模拡大の必要性も強調した。

さらに、平和の実現が欠かせない要素であると強調された。紛争は、開発の進展を一瞬で無にしてしまうため、ガザやウクライナ、スーダンなど、紛争が続く地域における平和の確立が急務である。世界の指導者たちは、分断を乗り越え、具体的な行動で紛争を終結させる責任があるとされた。

2030年まであと6年...SDGs達成は遠い夢か

グテーレス氏は、これらの課題に立ち向かうためには、集中力を失わず、大胆かつ協調的な行動を取ることが不可欠だと訴えた。また、女性や女児への教育の拡充や再生可能エネルギーの普及が、持続可能な社会への転換において中心的な役割を果たすと述べた。

2030年のSDGs達成期限まで残り6年。グテーレス氏は、目標達成に向けた国際的な結束を呼びかけたが、2024年の国連報告書は、進捗状況が依然として目標に遠く及ばない現実を示している。これまでの取り組みでは、目標達成に向けた実現可能性に疑問が残る状況だ。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三井物産、26年3月期は14%減益見込む 市場予想

ビジネス

エアバスCEO、航空機の関税免除訴え 第1四半期決

ビジネス

日銀、無担保コールレート翌日物の誘導目標を0.5%

ワールド

日韓印とのディール急がず、トランプ氏「われわれは有
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中