最新記事
SDGsパートナー

昔は処分にも困っていた「米の副産物」を国内産の資源として価値最大化、築野グループの「米ぬか革命」

2024年8月30日(金)14時34分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

newsweekjp_20240829071318.jpg

研究開発への真摯な姿勢が、穀物の循環型活用に向けた同社の技術蓄積の要となっている

国内外の研究者とも協力、たゆまぬ米ぬかの可能性探求の道

このように、米ぬかの可能性を引き出す製品開発を行うことで、食料危機やCO2排出、人々の健康課題などの解決に貢献する社会的価値と、経済効果を両立している築野グループ。その原点は、創業者・築野政次氏が抱いた想いにある。

同氏は戦中・戦後の食糧難を経て、「食糧の安定供給が図れる事業で社会に貢献したい」と考え、1947年に精麦事業を開始。その中で、米ぬかの処分に困っている農家や業者の声を聞いたことがきっかけで、「何とか捨てずに活用したい」と考えて立ち上げたのが、こめ油の製造事業だった。以降、同社では「もったいない」という精神と、「捨てるのではなく活用する」という発想を受け継ぎ、事業を拡大してきた。

国内向け事業にとどまらず、海外の有識者らとも協力して米ぬかの可能性を引き出すべく、1998年からは10年に一度、米に関する国際シンポジウムを開催。2023年のシンポジウムでは米の成分について、医学・薬学・有機合成化学等の研究者約30人が国内外から参加し、幅広い討議を行った。

newsweekjp_20240829071701.jpg

2023年12月に京都大学で開催された「お米の未来を考えるシンポジウム」の様子。学術的な内容を一般の人々にもわかりやすく伝えた

また最近では、イタリアのシエナ大学と共同研究を実施。その研究成果が2024年1月、フランスのボルドーで開かれた学会「Lipids & Cosmetics congress (4th edition)」で、若手研究者の部門の最優秀賞受賞という実績に結び付いた。

今後も米ぬかの高度有効活用を推進するために、新たな米ぬか成分の開発、機能性開発、さらには米ぬか資源における収率アップやロス削減などを目指していくという。

限られた用途のみで使われ、処分すら困る存在だった米ぬか。その価値を引き出すことで、脱炭素や健康課題、食糧危機といった多くの複合的な課題解決に寄与する築野グループの事業は、まさにSDGsへの挑戦を体現する取り組みと言えるだろう。


ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中