新築だけでなく既存のビルもZEB化し「ネットゼロ」へ...パナソニックの低コスト省エネ&創電技術
「220憶円規模の需要を創造し、脱炭素を日本全国で進める」
京都市は今、歴史ある街並みを守りながらも、企業誘致や子育て世代の定住を促進すべく取り組んでいる。厳しい景観条例により建物の高さを制限することで景観は守ってきたが、一方でオフィスや住宅を求めて企業や若い世代が市外に流出する課題を抱えているためだ。
そんな中での「既存建築物のZEB化」推進。気候変動が地球課題となっている時代ならではである。京都市は民間企業の持つ技術を活用し、コストを極力抑えた既存建築物ZEB化の普及拡大、認知度向上を目指している。
パナソニックが連携パートナーになったのは、2023年3月、自社ビルであるパナソニック京都ビルをZEB化改修(ZEB Ready※)した功績が大きい。同ビルは12月18日に「2023年度省エネ大賞」の経済産業大臣賞(省エネ事例部門)を受賞したほどである。
(※ZEBにはゼロエネルギーの達成状況に応じて4段階の定義がある。そのうち「ZEB Ready」は省エネで使うエネルギーを50%以下まで削減した建物を指す)

同ビルではLED照明のダウンサイジング、センサーによる自動制御、高COP(エネルギー消費効率)対応タイプの室外ユニット設置、AIによる空調制御など、既存の設備を省エネ性能に優れた設備にリニューアル。外皮改修などの大がかりな工事を行わず、低コストでエネルギー消費量を大きく減らすことに成功した。
また、屋上や駐車場にソーラーパネルを設置するなど、エネルギー供給ができる施設として対策し、レジリエンスも兼ね備えたZEB化を実現。駐車場に設置された急速充電ステーションは、普段はEV車の充電に、停電時には非常用電源システムとして活用できる。太陽光発電システムを併設することで、災害時にも長時間の安定した電力供給を可能にする。

京都市との連携の記者発表会で、パナソニック エレクトリックワークス社の近畿電材営業部京都電材営業所所長、橋本文隆氏はこう展望を語った。
「ZEBプランナーとして、京都市で10件、全国で280件のZEB化達成を目指す。220憶円規模の需要を創造することはもちろん、脱炭素を日本全国で進めることは、パナソニックという枠を超えて非常に意義があると感じている」
ZEB化された建物が日本に増えていけば、それが国全体のネットゼロ達成に向けた一助となる。これまで困難と考えられてきた低コストでの既存建築物ZEB化は、その動きをさらに加速させるだろう。その技術はきっと、他国にとっても有用なものとなるに違いない。
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