最新記事
SDGsパートナー

大量廃棄が予測される太陽光パネルを再資源化 宮城衛生環境公社が「エコロジーセンター愛子」に込めた願い

2023年12月21日(木)14時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
使用済み太陽光パネルを処理・再資源化するPVリサイクル事業を行う施設「エコロジーセンター愛子」

使用済み太陽光パネルを処理・再資源化するPVリサイクル事業を行う施設「エコロジーセンター愛子」

<社会に不可欠でありながら、偏見を持たれがちな「静脈産業」企業として脱炭素経営に着手。同社が目を向けたのは、太陽光発電設備が抱える課題だった>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


市民のライフラインを担う事業として、ごみ収集や産業廃棄物処分を手がける株式会社宮城衛生環境公社。再生可能エネルギー普及への機運が高まるなか、使用済み太陽光パネルの処理をめぐる懸念も広がっているが、その課題解決のため専用のリサイクル施設を建設した。そこには「静脈産業」企業としての、ある想いがあった。

迫りくる「太陽光パネルの大量廃棄」という社会課題

「静脈産業」という言葉がある。製品を生産するメーカーなど「動脈産業」に対し、消費が終わった製品や不用品を回収し、それらを処理、再加工したり資源に変えたりして市場に再投入する事業を指す。

社会に不可欠な産業であり、近年は例えば製品の環境負荷ひとつ取っても、原材料調達から製造、使用、廃棄・リサイクルまでを一貫して定量化する手法が広まるなかで、より一層重要度が増しているとも言える。しかし、ごみ処理場の建設計画にしばしば反対運動が起こるなど、市民からは温かな目で見られないことが多い産業でもある。

株式会社宮城衛生環境公社は、そんな静脈産業企業の1社だ。家庭ごみや事業ごみの収集、産業廃棄物処分などを手がける同社は今年4月、仙台市内に使用済み太陽光パネルのリサイクル施設「エコロジーセンター愛子(あやし)」を開設した。その背景にはある想いがあったと、代表取締役の砂金英輝氏は言う。

「決してスマートできれいな仕事として見られませんが、市民生活には欠かせないライフラインと言える仕事です。新型コロナウイルスが蔓延した時期にも、雨の日も風の日も衛生環境を守るために責任を持ってごみの収集を行いました。美しい街並み、美しい景観を守っている人々がいることを分かってほしい。そのためには、企業としての正しい姿勢と行動を多くの方々に知っていただきたいと思っています」

折しも日本では、再生可能エネルギーの導入が急ピッチで進んでいる。その促進のため経済産業省は2012年、再エネから作られた電気を電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が保証する「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」を開始した。

同制度で定められた容量10kW未満の太陽光発電の買い取り期間は10年間。そのため近く制度が満了を迎える家庭や事業所も少なくなく、適用期間が過ぎると売電収入が大幅に下がるため、発電を終了して太陽光発電設備を解体・撤去するケースが増える見込みだ。加えて、太陽光パネルの製品寿命という問題もある。

この問題にどう対処するか? 静脈産業企業としての正しい姿勢と行動、脱炭素経営に舵を切っていた宮城衛生環境公社は、太陽光パネル専用のリサイクル施設建設を決意する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中