マシンもジムも不要だった...鉄格子の中で甦った、失われし「筋力の秘儀」キャリステニクスとは?
もっと大きく、もっと強くなりたかった。そうなるために、出会うすべての人からなにかを学び取るようにした。監獄に収監されている人々の顔ぶれは多彩だ。体操選手、兵士、オリンピックの重量挙げ選手、武道家、ヨガの先生、レスラーがいた。医者さえもいた。
もちろん、ジムには行けなかった。何も使わず、監房で孤独なトレーニングを続けるしかないのだ。つまり、自分の体をジムにする方法を見つけなければならなかった。トレーニングすることが心のセラピー、そして執念になっていった。
その結果、6か月で大きな体とパワーをつくることができ、1年が経つと、ホールに集まる囚人の中で、もっとも身体能力がある一人になっていた。
すべて、キャリステニクスのおかげだった。キャリステニクスは監獄の外では死んでしまったが、監獄内では、世代を超えて受け継がれていた。
監獄という環境でのみこの知識が生き残ったのは、トレーニングする上での選択肢が他にあまりないからだ。ピラティスのクラスも、エアロビクスのクラスもない。監獄内にあるジムが話題になるが、それは、ごく最近の流れであり、ジムがあったとしてもお粗末な器具しかない。
ポール・ウェイド(PAUL "COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。
『プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田 雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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