最新記事
健康

老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌の育て方【最新研究】

2025年1月31日(金)09時20分
内藤裕二(京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座 教授)

CagAはピロリ菌以外の菌では見つかっていない特殊なタンパク質で、胃粘膜表面に接着したピロリ菌がこのタンパク質を粘膜上皮細胞に注入することで、炎症や細胞のがん化が生じます。

日本の中でも沖縄以外の人が感染しているのはほとんどがこのタンパク質をつくる菌株ですが、沖縄の人の胃の中にいるのは、欧米でよく見られるCagAを持たない毒性が低い菌株です。実際、沖縄では胃がんの発生率は低いのです。

腸内細菌が出産時に母親から子どもへと代々引き継がれていくことを考えると、ピロリ菌のタイプが欧米型で、かつアッカーマンシア菌を持っているということは、沖縄の人の腸内細菌のルーツはどこかで欧米の腸内細菌タイプのルーツと重なっているのかもしれません。


長寿の腸内細菌には食事が重要? 注目が集まる「地中海食」

では、長寿につながる腸内細菌叢をつくる食事というのはどういうものなのでしょう。

腸内細菌と食事に関する研究は、日本より欧米のほうが進んでいます。長寿や健康、腸内細菌にいい食事というエビデンスが最も多いのは「地中海食」です。

地中海食とは、トマトやオリーブオイル、魚介類などを多く食べる地中海沿岸地域の伝統的な食事のことで、ヨーロッパの研究グループによって、これまでに肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防・改善や、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の予防に有用ということが明らかになっています。

すでに地中海食の介入試験により、加齢による心身の衰えである「フレイル」が予防可能であり、そのメカニズムに炎症抑制と腸内細菌叢の変化が関わることも明らかにされています[*]

その試験では、欧州5カ国で612人の高齢者(65〜79歳)を対象に、12カ月間の食事介入試験が実施されています。

対象者の半数を地中海食、残りの半数には通常の食事を継続してもらい、試験開始前と終了後の腸内細菌叢の変化およびフレイルの程度が評価されました。その結果、地中海食の継続と特定の微生物叢の変化の関連が確認されたそうです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国、ウォン安への警戒強める 企画財政相「必要なら

ワールド

マクロスコープ:意気込む高市氏を悩ませる「内憂外患

ワールド

ドイツ、連邦・州のドローン防衛を統合 ベルリンに初

ビジネス

次期FRB議長は「大幅利下げを信じる人物」=トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中