最新記事
日本社会

「盗んだバイクで走り出すって......あり得ない」  Z世代に30年昔の尾崎豊の声は届かないのか?

2023年9月27日(水)17時50分
鈴木裕介(内科医・心療内科医・産業医) *PRESIDENT Onlineからの転載
夜道を走るオートバイ

 DBP - iStockphoto


友達付き合いを避けたり、引きこもったりする若者が増えたのはなぜか。心療内科医の鈴木裕介さんは「日本人のストレス反応が大きく変化したからだ。尾崎豊の『15の夜』に若者が共感できなくなったことが関係している」という――。

※本稿は、鈴木裕介『心療内科医が教える本当の休み方』(アスコム)の一部を再編集したものです。

現代人のストレス反応は「氷のモード」が多い

ストレス反応には「アッパー系」(炎のモード)と「ダウナー系」(氷のモード)の二通りがあり、それぞれ対応する神経系が異なります。

「アッパー系」は、ストレスがかかったときに、心臓の鼓動や呼吸が速くなり、血圧が上がり、不安やイライラ、焦りを感じたり、胸がドキドキ、ざわざわしたり、息が浅く速くなったり、「寝つけない」「途中で起きてしまう」といった睡眠の問題が発生したりする反応です。交感神経優位な状態と言えます。

一方、「ダウナー系」は背側迷走神経が優位な状態で、体がだるい、活力や興味がわかなくてうつっぽくなる、感情がわかない、やたら眠い、ボーっとする、記憶が曖昧になる、などの反応がそれにあたります。いずれも、血圧や心拍数、覚醒レベルなどが下がる、いわゆる「ローテンション」な反応です。

心療内科医として多くの患者さんと接している中で、気づいたことがあります。それは、「ストレスを受けたとき、いずれのモードに入るかは、時代性も関係しているのではないか」ということ、そして「現代は、氷のモードに入りやすい人が多い」ということです。

闘う相手が明確だった昭和時代との違い

少し前までは、炎のモードに入りやすい時代でした。闘いや競争は交感神経を優位にしますから、炎のモードに入りやすい時代は、わかりやすい「敵」が存在し、闘争(もしくは逃走)するべき相手がはっきりしている時代であるともいえます。

たとえば、1960年代は学生運動が盛んで、全共闘世代を中心に、日本政府や大学を相手に闘い、変革を迫ろうという社会的な熱狂がありました。社会に「穴」が多く、「ここを変えたら、もっと世の中はよくなる」という改善点がたくさんある。だから、それを変えていこうというムーブメントに参画することに、やり甲斐や意義を深く感じ、またそうした努力によって社会が良くなっていくことを実感しやすかった社会だともいえます。

70年代、80年代は、高度経済成長やバブル景気の中で、人々は家電、自家用車、マイホームなど物質的な豊かさを手に入れること、受験戦争や出世競争に勝ち抜くことに必死でした。「競争に勝つこと」によって「物質的な豊かさを手に入れること」がある程度は約束されていたから、多くの人はそこを目標にできたのではないかと思います。

豊かさを得るため、社会を良くするため、といった「目指すべき方向性」があり、人々はそこに向かって、交感神経を優位にしてフル稼働し、目標を妨げる存在と闘い、努力することができていたのです。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米FRB、利下げ「年内1回のみ」想定 金利据え置き

ワールド

バイデン氏次男の有罪評決、8割は投票判断に「影響せ

ワールド

中国、対米関係安定化の意向 景気を最重要視=米国務

ワールド

ガザ停戦案、ハマスが「微修正」提案と米高官 幹部は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中