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寄稿

教育者でジャーナリストのジョージ・ミラーが「自転車の旅」で見つけた愛すべき東京

2023年3月20日(月)11時30分
※TOKYO UPDATESより転載
サイクリングを楽しむジョージ・ミラー氏

東京や横浜、鎌倉界隈でサイクリングを楽しむジョージ・ミラー氏

<テンプル大学准教授でジャーナリストのジョージ・ミラー氏が、東京での生活を彩った出会いと発見を、「頼れる相棒」である自転車での旅路の写真と共に振り返る>

2018年、高円寺で新しいギア無しの自転車を手にした日は、地元では有名な東京高円寺阿波おどりの日だった。それは素晴らしいものだった。

太鼓を叩く音と甲高い声が高層ビルにこだまする中、色とりどりに着飾った踊り手たちの歓喜の舞を見ようと何万人もの観客が集まっていた。踊り手の一行がアーケードのある商店街に集結すると、喜びにあふれた歓声が熱狂に包まれた。それに合わせて観客も踊らずにはいられない。飲み物を手に持ったまま音に合わせてステップを踏み踊る人もいた。

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ジョージ・ミラー氏がサイクリングの途中で出会った「東京高円寺阿波おどり」の踊り手たち(2018年)

8月の暑さにもかかわらず、私は数時間歩き回り、かき氷で涼をとった。かき氷を食べると、幼少期に過ごした九州の暑い夏をいつも思い出す。

日は暮れたが、15キロほど離れた自宅まで自転車で帰らなければならなかった。そう、本来なら15キロの距離だった。しかし、新宿や渋谷の夜更けの盛り上がりを見たかったので、途中写真を撮りながら本来のルートを外れて自転車を走らせた。東京に来たばかりだったので、皇居にも行ってみようとさらに遠回りをした。何度か道を間違え、迷い、しばらく同じところをぐるぐる回った。

家に着く頃には疲れ果てていた。翌日の日曜日は寝坊したが、午後にはまた自転車で東京を回った。それから3年間、私はほぼ毎日、自転車で東京を探索した。当初、私にとって全く謎に包まれていた東京が、この自転車のおかげですぐに快適な住処になった。

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妻を連れていくこともあったサイクリングの旅での出会いと発見は、ジョージ・ミラー氏にとっての東京への道しるべとなった

日本で暮らすきっかけとなった幼少時代の経験

私は米国で育ったが、母方は、長崎県佐世保市出身の日本人だ。幼い頃は毎年1カ月ほど母と一緒に佐世保に帰省したが、年齢が上がるにつれてその頻度は減り、滞在期間も短くなった。

時が過ぎ、私が成長するにつれて、佐世保の家も変化した。500年の歴史ある母の実家を訪れるたびに、新しいいとこ、新しいペット、新しい家具が増えていた。佐世保での暮らしは、当然のことながら、私がいない間にもどんどん進んでいった。

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