最新記事

マネー

海外の富裕層は財布代わりに「ジップロック」 風水で選んだ長財布をもつ日本人は時代遅れ?

2019年4月19日(金)06時00分
花輪 陽子(ファイナンシャルプランナー) *東洋経済オンラインからの転載

ブランド品の高価な財布を膨らませている日本女性

では、今の日本人の財布事情はどうでしょうか。

私は、女性誌で「お財布診断」の連載をしていますが、20代、30代の日本の女性たちがブランド品の高価な財布を使っています。しかも、財布には現金やクレジットカードのほか、スーパーやドラッグストアのカード、写真、お守り、おみくじ、大切にしている小物......などなど、あれやこれやと詰め込んでいるせいで、結構なボリュームに膨らんでいます。

これは男性も然り。割引券や飲食店のレシートまで、財布に大事にしまっている人が少なくありません。財布に大切な物を集中保存すると、なくした場合は大変!「盗難に遭って、身動きが取れなくなった」という話もよく聞きます。財布にはカードだけ入れておけば、そんな事態にはならないでしょう。カードの利用はすぐストップできますし、不正利用されても一定期間内に連絡すれば補償される場合が多いです。

シンガポールでは、富裕層ばかりでなく、女性も男性も働いている人は財布をあまり持ち歩きません。カフェでの会計も携帯アプリで決済をしている人や携帯ケースに入れているカードで決済している人が目立ちます。国際ブランドのクレジットカードや、デビットカードの付いたキャッシュカードを1枚持ち歩けば、マレーシアやオーストラリアなど周辺国に行っても決済できます。

海外のお金持ちは日本の電子マネーを使いたくない

ちなみに、海外の投資家たちは「日本の銀行や証券会社が全然優しくない」と嘆いています。「日本国内で外国銀行のATMが見つからないし、外国人は銀行口座や証券口座を作ることすら難しい」と。

日本は、電子マネーの利用では世界でも先進的ですが、交通系、流通系、独自ベンダーなど複数の企業が導入し、独自のサービスを展開しているので、これも海外の投資家には使い勝手がよくないと思われています。国際ブランドのデビットカード1枚でタップしてコンビニやカフェやスーパーで決済している彼らにすれば、プリペイド方式で種類が多すぎる電子マネーは不便に感じるのでしょう。

財布を持たない富裕層は「マネーの達人」ばかり

日本政府は消費税10%導入に向けて、キャッシュレス決済へのポイント還元制度を期間限定で実施する予定で、今後は決済事業者が発表されることになっています。今のところ、大手カード会社が名を連ねています。

他方で、LINE、楽天、アップルなど、アプリと連携させる新しいクレジットカードが続々登場する予定なので、新しい勢力によってスマホ決済が加速される可能性もあります。「財布」の出番は、ますます少なくなるでしょう。

ただ、気をつけなければならないのは、クレジットカードは消費を誘発する傾向がある、ということです。アプリで手軽に決済ができるようになっても、クレジットカードを利用することには変わりはありません。アプリなら財布に入れる枚数がかさばらないと思うかもしれませんが、別の会社のクレジットを利用すれば締め日や決済日が変わり、管理は複雑になります。

その際は、自分の管理能力に合わせてクレジットカードは1、2枚に絞ったり、即座に銀行の残高から引き落とされるデビットカードにしたりするなどの工夫も必要でしょう。

富裕層の多くは「マネーの達人」であって、人間関係における貸し借り勘定なども含めて、すぐ計算ができる人たちです。「そんなことはできそうにない」という人は、「財布を持たない」のもハードルが高いかもしれません。

ただし、この先、決済において「財布」の出番が少なくなることはあっても、増えることは考えられません。その時流に乗ろうとするならば、まずは、「今日使う分だけ小さなポーチや小銭入れに入れる」といったことから実践してみてはいかがでしょうか。

私自身もその日の予定に合わせて必要な金額を計算し、使う分だけの現金と電子マネーなどを携帯ケースやキーケースに忍び込ませています。「財布」を持つのをやめてから、盗難リスクや不意の出費を減らすことができるようになりました。使う現金を減らし、電子マネーに慣れていくことによって無駄なATM手数料も減らせますし、日々の決済の記録が残せるなどのメリットもあるなと実感しています。

『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中