最新記事
映画

アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、笑いとアクション満載

A Timely Masterpiece

2025年10月24日(金)16時37分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
『ワン・バトル・アフター・アナザー』で革命組織の爆破物担当パットを演じるレオナルド・ディカプリオ

喜劇の才能が冴えるレオナルド・ディカプリオ WARNER BROS. PICTURESーSLATE

<P・T・アンダーソン監督の最新作は「ぶっ飛び」革命エンタメ。タイトルに込められた「真の意味」とは?──(ネタバレなし・あらすじ・レビュー)>

何でも時間をかければいいというものではない。ベテラン監督が数十年間温めた企画をいざ映画にすると、構想を練りすぎたせいでかえって失敗したりもする(最近ではフランシス・フォード・コッポラの『メガロポリス』)。

【動画】ディカプリオが「トム・クルーズみたいに」?...『ワン・バトル・アフター・アナザー』予告編

一方で、それだけの年月が必要な映画もある。

監督が大きな予算を任され、好きな俳優を指名し、信頼できる協力者とチームを組めるようになるには時間がかかる。経験を積み業界でそれなりの評価を得て初めて、夢は実現性のある企画に変わる。

2014年、ポール・トーマス・アンダーソン監督はトマス・ピンチョン原作の『インヒアレント・ヴァイス(Inherent Vice)』を発表した際、「僕はピンチョンの熱烈なファンだ」と述べた。「(ピンチョン作の)『ヴァインランド(Vineland)』も映画にしたいが、さすがに無理だろう」


映画『インヒアレント・ヴァイス』予告編


確かにどの作品であれ、難解な作風で知られる巨匠ピンチョンの小説を映画化するとなれば簡単にはいかない。だが11年の時を経て、アンダーソンはついに『ヴァインランド』を『ワン・バトル・アフター・アナザー(One Battle After Another)』のタイトルで映画化した。

原作に忠実というよりファンの二次創作に近いが、堂々たる傑作だ。ピンチョンの精神をそのままに、ディストピアめいた現実を知的に考察しつつ、ぶっ飛んだエンターテインメントに仕上げた。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

防衛費増額、国の要請に基づき準備と対応進める=三菱

ビジネス

中国万科、18日に再び債権者会合 社債償還延期拒否

ビジネス

中国11月鉱工業生産・小売売上高、1年超ぶり低い伸

ワールド

自国第一主義で米独連携を、MAGA派イベントでAf
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中