最新記事
ウクライナ戦争

戦況・外交ともにロシア有利...トランプ外交ではウクライナ和平は厳しい理由

2025年8月26日(火)20時48分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ドナルド・トランプ, ウクライナ戦争, ウォロディミル・ゼレンスキー, ウラジミール・プーチン, ロシア、アメリカ、欧州、ヨーロッパ、EU、NATO

米ロ首脳会談後の記者会見を終え会場を去るプーチン大統領 REUTERS-JEENAH MOON

<米ロ首脳会談などを受け、停戦への期待がささやかれるウクライナ戦争。しかし防衛研究所の兵頭慎治氏は、和平プロセスはまだ「0合目」で、交渉の面でもロシアのペースになりつつあると動画で解説する>

今月15日には米ロ、18日には米ウクライナ+欧州各国と首脳同士の会談が相次いでも、現状は登山に例えるなら0合目――。和平交渉を本格的に始めるための「登山口」に着いたに過ぎない、と防衛省・防衛研究所の研究幹事で東北大学客員教授の兵頭氏は説明する。

加えて、ロシア側には「ただちに停戦をしなければいけないという理由がない」という事情もある。戦況がロシア側に有利な上、ロシアのプーチン大統領が掲げる「紛争の根本原因の除去」、すなわちウクライナの非ナチ化、中立化、非武装化という戦争の目的が達成されていないからだ。

ロシアがウクライナ東部ドンバス地方の割譲を停戦条件に挙げているとの報道もあるが、兵頭氏はこの要求の本気度に疑問を呈する。ウクライナにとって国土の割譲は憲法上も政治的にも「あり得ない」選択肢であり、ロシアはそれを「ある程度見込んで、要求を出している節がある」という。

ウクライナが到底受け入れられない要求を突きつけることで「根本原因」に関して譲歩を引き出すなど、時間を稼ぎつつ交渉を有利に進めるための「クセ球」との見方だ。

また、ロシアが容認するとされるウクライナのNATO(北大西洋条約機構)に近い安全の保証についても、加盟国の集団的自衛権の行使が規定されているNATO第5条のようなものではなく、実態を伴わないものに終わる危険性を警告。1994年にウクライナの安全を英米ロが約束しながら反故にされた「ブダペスト覚書」の二の舞になりかねないと語る。

事務方の調整を後回しに大枠を決めるトランプ氏のトップダウン外交が今後も展開されれば、実効性のない合意が結ばれるリスクが高まるとの分析だ。

動画ではこのほか、ロシアの継戦能力が来年ピークアウトした後のシナリオや、米ロなどの大国が勢力圏を切り分ける「新ヤルタ体制」が現実となった場合に日本が果たすべき役割など、幅広い分析が展開されている(これは動画の抜粋記事です。詳しくは動画をご覧ください)。

BAT
「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世界の構築を共に
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カナダ失業率、8月は7.1%に悪化 米関税で雇用や

ワールド

英副首相が辞任、後任にラミー外相 大幅内閣改造で挽

ワールド

EU、グーグルに34.5億ドル制裁金 「広告で自社

ワールド

FRB、9月大幅利下げ検討も 低調な雇用統計受け=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接近する「超巨大生物」の姿に恐怖と驚きの声「手を仕舞って!」
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 7
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 8
    謎のセレブ中国人ヤン・ランランの正体は「天竜人」?
  • 9
    キリストを包んだとされる「聖骸布」はやはり偽物だ…
  • 10
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中