エルモが子供を洗脳している...『セサミストリート』はトランプ政治とテクノロジーに殺される?
Big Bird’s Big Battle

『セサミストリート』の初期の登場人物とビッグバード(1969年頃) CHILDREN’S TELEVISION WORKSHOPーHULTON ARCHIVE/GETTY IMAGES
<「税金でリベラルの主張を放送するな」──保守派の「偏向放送」攻撃で、老舗番組はいまや文化戦争の戦場に。さらには巨大テック企業の暗い影も忍び寄り>
かつてアメリカの親たちは、子供をテレビの前に座らせることに何のためらいも感じなかった。
『セサミストリート(Sesame Street)』のような番組は何十年もの間、子供たちにとって安全な隠れ家と考えられていた。健全な教育番組で、子供たちはアルファベットや基本的な算数、時には道徳心や子供であることの意味まで学ぶことができた。
だが今では、看板キャラクターのエルモでさえ、アメリカの文化戦争や急変するメディアビジネスと無縁ではない。
『セサミストリート』の放送開始は、ニクソン政権時代の1969年。テレビ業界の最長寿番組の1つだ。
制作は非営利団体のセサミワークショップ(Sesame Workshop)。アメリカではPBS(公共テレビ放送網)が何十年も加盟局に配信してきた。PBSはナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)と共に米公共放送公社の資金援助を受けている。
米連邦政府が直接支出する『セサミストリート』向けの補助金は年間500万ドル前後。『セサミストリート』の海外版は米国際開発庁(USAID)の資金援助を受け、欧米への好感度を上げる効果的ツールと見なされてきた。
USAIDと言えば、ドナルド・トランプ大統領が3月初旬の議会演説で予算の無駄遣いの典型として名指しした機関だ。
『セサミストリート』と政府の深いつながりは、3月下旬の下院小委員会の公聴会でも問題になった。共和党の議員たちはPBSとNPRの経営陣を呼び付け、公的資金で運営される機関が納税者の負担でリベラル派のイデオロギーを宣伝していると批判した。