ニュース速報
ビジネス

アングル:米航空会社、プレミアムシートに注力 旅行需要不振でも堅調

2025年07月27日(日)07時30分

 7月18日、米国の航空会社は、収益を拡大し景気変動による影響を小さくとどめるため、新型コロナ禍後にビジネスクラスなどプレミアムシートへの投資をさらに増やした。写真はニューヨークのJFK空港に駐機中のデルタ機。4月撮影(2025年 ロイター/Jeenah Moon)

Rajesh Kumar Singh

[シカゴ 18日 ロイター] - 米国の航空会社は、収益を拡大し景気変動による影響を小さくとどめるため、新型コロナ禍後にビジネスクラスなどプレミアムシートへの投資をさらに増やした。

この戦略は奏功しており、旅行需要全般が落ち込む中でもプレミアムシートを提供する航空会社の利ざやは堅調を保っている。価格に敏感な顧客の支出が減った分を、富裕層の力強い需要が相殺している形だ。

デルタ航空は10日、第2・四半期にプレミアムシートの売上高が前年同期比5%増えたのに対し、エコノミークラスは5%減ったと発表した。10%ポイントという両者の差は新型コロナ禍以降で最大。プレミアムシートの増収が貢献し、第2・四半期の利ざやは2桁台を達成した。

ユナイテッド航空も第2・四半期、旅客収入全体が1.1%増にとどまったのに対し、プレミアムシートの収入は5.6%も増え、業績を支えた。

トランプ米大統領の関税措置による景気後退懸念が広がり、旅客機予約が打撃を被った第1・四半期にも同様の傾向が見られていた。 

プレミアムシートの堅調な需要について航空業界幹部らは、航空旅行支出の75%を占める年収10万ドル以上の米国の家計の財政状況が健全だからだと説明している。

デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は10日、「わが社の中核的顧客は健全な状態にあり、引き続き旅行を優先している」と述べた。

<エコノミークラスは不振>

対象的に、所得の低い層は景気全般の不透明感と生計費の高騰によって打撃を被っている。

バンク・オブ・アメリカのデータによると、6月は中・高所得層の支出が底堅かった一方、低所得層の支出は減少した。

ロイターが確認した格安航空ジェットブルーの社内メモによると、同社は先月、需要低迷により2025年は採算割れになりそうだとして、新たなコスト削減策を計画中であることを職員に通達した。

例年なら夏場はかき入れ時だが、今年はエコノミークラスの需要が弱いため、航空会社は空席を出さないよう値引きを迫られている。

フロンティアやスピリット航空などの格安航空は、これ以上の値引きを避けようと便数の削減に力を入れている。

航空会社幹部らは、プレミアムシートが業界の「利益の差別化要因」になったと指摘する。プレミアムシートの顧客はあまり価格に左右されないからだ。

これまでの成功に意を強くした航空会社は、プレミアムシートをより魅力的にするための投資をさらに増やしている。

ユナイテッドは新たなボーイング787―9型機に半個室型で大型スクリーンなどを備えたプレミアムシートを導入した。

<格安航空も参入>

利ざや縮小に直面した格安航空会社も、プレミアムシート市場への参入を試み始めた。

ジェットブルーは国内線にファーストクラスの座席を導入し、ニューヨークとボストンの空港に初めてラウンジを開設した。フロンティアも客室の先頭座席2列をファーストクラスに改修中だ。

ビジュアル・アプローチ・アナリティクスのデータによると、米国内線のプレミアムシート数は2019年以来14%増と、エコノミークラス席の3倍の伸びを示している。

ただプレミアムシートは供給過剰に陥り、価格決定力が損なわれかねないとの懸念もある。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国、対米通商交渉で相互に合意可能な協定案準備 大

ビジネス

中国工業部門利益、6月は前年比4.3%減 マイナス

ワールド

北朝鮮金総書記、「反米」で勝利誓う 朝鮮戦争休戦7

ワールド

イスラエル、ガザで支援物資の空中投下再開
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:山に挑む
特集:山に挑む
2025年7月29日号(7/23発売)

野外のロッククライミングから屋内のボルダリングまで、心と身体に健康をもたらすクライミングが世界的に大ブーム

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 2
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 3
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や流域住民への影響は?下流国との外交問題必至
  • 4
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    運転席で「客がハンドル操作」...カリフォルニア州、…
  • 9
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「電力消費量」が多い国はどこ?
  • 1
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 2
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心中」してしまうのか
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 5
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 6
    「カロリーを減らせば痩せる」は間違いだった...減量…
  • 7
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 8
    レタスの葉に「密集した無数の球体」が...「いつもの…
  • 9
    「マシンに甘えた筋肉は使えない」...背中の筋肉細胞…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中