最新記事
大谷の真実

米スポーツライターが断言「大谷翔平は被害者。疑問はある程度解消した」...陣営の不手際が騒動を大きくした

OHTANI’S ORDEAL

2024年4月5日(金)19時45分
アレックス・カーシュナー(スポーツライター)

大谷陣営の説明が一変したのは、水原の不誠実な通訳に頼り切っていたためだ。大谷によれば、水原は「大谷とコミュニケーションを取っている」とし、「(大谷が)自分の借金を肩代わりした」という嘘を代理人らに伝えていた。この嘘が世間に広まったのは、大谷陣営が雇った広報の専門家が、嘘つきの張本人にメガホンを渡したせいでもある。

大谷と水原が試合直前まで仲良くしていた理由も分かった。大谷は当時、水原の賭博問題も、自分の口座から送金がなされていたことも知らなかった。事実を知ったのは、試合後に水原がチームに賭博問題を説明した後、改めて大谷と一対一で話をしたときだった。

当事者たちが韓国にいる間に、アメリカの弁護団が真相を突き止めたのは、大谷がすぐに連絡したからだ。水原は大谷と2人きりになったとき、自分に巨額の借金があり、大谷の口座から賭け屋に送金したことを告白したが、大谷は「やはりおかしい」と思い、「ドジャースの関係者や弁護士に連絡をした」と語っている。

なぜ水原が大谷の口座にアクセスできたのかといった疑問は残るが、これは捜査で明らかになるだろう。

それにしても驚きなのは、これまで矛盾する情報が飛び交っていたのは、全て水原が原因だったことだろう。彼は賭博依存症だっただけでなく、今回の問題について大谷が見聞きする情報を自分に都合良く管理できる立場にあった。

大谷がプライバシーをかたくなに守ってきたせいもあり、痛快なホームランを放ったり、打者を三振に仕留めたりする以外に、彼がいったいどういう人物なのかはほとんど知られていなかった。テレビの解説者も、彼がスポーツ賭博をやるような人物なのか、はたまた友人の借金を肩代わりしてやるような人物なのか、コメントしようがなかった。

大谷は今回、スポーツ賭博をしたこともなければ、誰かに賭けをさせたこともないと明言した。自分の口座から水原が賭け屋に送金をしていたことにも一切関わっていないという。もちろんそれは大谷の説明であって、真相ではない可能性もある。

だが、広報のプロに囲まれた若くてリッチなスポーツ選手が、自分の陣営から発信された嘘に翻弄された1週間の終わりに、改めてマイクに向かって嘘をつくなどということがあり得るだろうか。しかもそれが嘘だったと分かれば、スポーツ選手としてのキャリアも、法的立場も大打撃を受ける可能性がある。

大谷が3月25日の会見で話したことが100%事実でなかったとしたら、彼は通訳以外に変えなければならないことがある。

©2024 The Slate Group

20240618issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB当局者、年内利下げは1回・25年は4回と予想

ビジネス

FRB、年内1回の利下げ予想 大統領選前の動き想定

ワールド

米・ウクライナ、13日に新たな安保協定に署名へ

ワールド

北朝鮮とロシアは「無敵の戦友」、金総書記がプーチン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中