最新記事

韓国

CDが売れない2000年代に入り、韓国の音楽産業だけがやったこと

2022年10月22日(土)15時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
BLACKPINK

女性音楽グループとして世界最多の規模のファンを持つ韓国のBLACKPINK Eduardo Munoz-REUTERS

<BTSやBLACKPINKを筆頭に、韓国の音楽がグローバルな存在感を増している。その秘密はどこにあるのか。国際社会文化学者のカン・ハンナ氏がその一端を明らかにする>

「日本のお手本は、間違いなく韓国。もっと早くこの本を読みたかった」

日韓を股にかけ、メディアやコンテンツの研究を行うカン・ハンナ氏の新著『コンテンツ・ボーダーレス』(クロスメディア・パブリッシング)の帯には、元NewsPicks編集長、佐々木紀彦氏(PIVOT代表取締役)のそんな惹句が躍る。

カン氏はソウル出身。国際社会文化学者、タレント、歌人......と複数の顔を持ち、日本で活躍している。

文化コンテンツには多様なやり方があり、日本には日本らしい、韓国には韓国らしい手法があるというのがカン氏自身の考えだが、映画からドラマ、アイドル・音楽グループまで、グローバルな存在感を増す韓国コンテンツへの関心は日本でも高まっている。

そこでカン氏は、この新著で韓国における制作の仕組みや作り手の考え方、韓国コンテンツ産業のマクロ的な分析を中心に、「ボーダーレス」な時代に突入したコンテンツ産業の現状を明らかにした。

本書には、ONE MEDIA代表の明石ガクト氏、中国事情に詳しい動画クリエイターの山下智博氏、iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長の中村伊知哉氏それぞれとの対談も収録されている。

ここでは本書から、コンテンツを徹底的にデジタル化した韓国音楽産業の事例を、抜粋して掲載する(本稿は抜粋の第2回)。

※抜粋第1回:日本と香港を押しのけ、韓国エンタメが30年前に躍進し始めた理由

◇ ◇ ◇

「DX時代に勝つ方法は何ですか?」と時々質問されることがあります。筆者が韓国カルチャーやコンテンツの成長を研究する中で、ひとつ明確になったことがあります。それはDX時代に誰がいち早くリスクを取るのかということです。

つまり、先に勇気を出すことができた人が未来を変えるという話なのです。革新的な方法でなくても、そろそろこれが来るんじゃないかと思うことをいち早く始める、そしてそれをやり続けることで結果は出しやすくなるのです。

また違う事例を見てみましょう。

2000年代に入り、日本だけではなく韓国の音楽業界も、「なかなかCDが売れない」という悩みを抱えていました。ただし、韓国は時代の変化に気づき、世界的基準でどの国よりも早かったのが「デジタル音楽市場」を作り上げたことです。

韓国の大手通信サービスSK Telecomが2004年11月にMelonという音源ストリーミング配信サービスを始めました(注9)。アメリカのAppleがiTunes Storeを始めたのが2003年4月で、グローバルデジタル音源市場を主導し始めたのが2007年頃であるため、非常に早かったことがわかります。

※注9:今は韓国の大手インターネットサービス会社である、kakao(カカオ)の傘下。

いち早く変化に気づき、新しい市場を作り上げた行動力はその後も大きな強みとなり、20年ほど経った今も、韓国デジタル音楽市場での「韓国国内企業のシェア」は圧倒的です。2021年5月時点では、韓国国内の音源ストリーミング市場のシェア率の1位はMelon(31.4%)で、2位も国内企業のGENIE MUSIC(18.54%)です。

その次がYouTube Music(13.27%)、FLO(10.95%)、Naver VIBE(3.67%)、Bugs(2.15%)、Spotify(1.04%)と続きますが、YouTube MusicやSpotifyなどグローバル企業の韓国進出でも揺るがないほど、韓国国内企業の音源ストリーミングサービスは圧倒的に強いです。

これはほかの国と比べると異例な現象であり、世界規模の音源ストリーミングサービスが韓国に進出してきても10年、15年前から使い続けてきた根強いユーザーを握っているMelonやGENIE MUSICにはなかなか勝てないものです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中