最新記事

映画

『イカゲーム』主演のイ・ジョンジェ 遅咲きスターが「カンヌ絶賛」の初監督作を語る

Success Is Not a Game

2022年9月9日(金)17時13分
スー・キム

エージェントのパク・ピョンホ(イ)とキム・ジョンド(チョン)は「対照的な性格だが、互いの姿に自分を見てほしかった」と、イは言う。

両者はあまり言葉を交わさないが、「2人の間に一体感と連帯感があること」を重視した。「2人を1人の人間に融合したかった」

チョンとの共演は、息の合った演技で青春ドラマ『太陽はない』をヒットに導いて以来、24年ぶりとなる。なぜここまで時間がかかったのか。

「彼とはまた一緒にやろうと話していた。共演する企画を何年も探し、共同で脚本まで書いたのに実現しなかった」

イはチョンを「今まさに脂の乗り切った名優」と絶賛し、「監督として、ぜひとも彼に出てほしかった」と語る。「チョン・ウソンはイ・ジョンジェ監督の映画に出たときが一番光っていたと、観客に言わせたいんだ」

熟考の末、舞台は現代に設定した。「今の時代、人はフェイクニュースや誤情報にゆがめられた真実をうのみにし、とかく敵味方に分かれて対立する」

対立を「操り、そこから利益を得ようとする連中」もいるとイは指摘し、「渦中の僕らには、いがみ合うことで何の得があるのか」と問い掛ける。「自分の信じることが本当に正しいのか、僕らは常に確かめなければいけない。この映画では、そうしたテーマも追求したかった」

だが目指したのは「大小のどんでん返しが連なるハイテンションな映画」だという。「スピード感のあるスパイスリラーだが、ストーリーは実に複雑。とにかく楽しんでもらえたらうれしい」

監督としてカンヌで手応えを感じた今も、本業は俳優だとイは考える。「監督するより演じるほうが難しい。演技は僕のアイデンティティーだし、まだまだ俳優としてやりたいことがたくさんある」

次のステップはハリウッド進出か

ショービジネスの世界に入って30年近くがたち、やっと一息つくコツを学んだという。「自分を大事にするようになった。これまでは、何が起きても対処できるよう毎日気を張って生きてきた気がする」

ただし、肩の力を抜くのはなかなか難しそうだ。「経験を積めば積むほど、責任は大きくなる。『イカゲーム』が世界で注目され、韓国の映画やドラマが愛されるようになった今は、以前にも増して責任の重さを感じている」

次のステップはハリウッド進出だろうか。今年、イはクリエーティブ・アーティスツ・エージェンシーと契約した。スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクス、ブラッド・ピット、ウィル・スミスら超大物を顧客に抱える名門タレントエージェンシーだ。

ハリウッドで最も組みたい監督と俳優は誰かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「多すぎて1人は選べない。だがいつかトッド・フィリップス監督の映画に出て、ホアキン・フェニックスと共演できたら最高だね」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア、トランプ関税影響の国内企業に支援策を発表

ワールド

豪次期フリゲート艦計画で日本案採用、「豪にとりベス

ワールド

赤沢再生相、5日から訪米で調整 自動車関税で早期の

ワールド

アラスカLNG計画、「適切に方策講じる」=武藤経産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をディズニーが公開へ? 50周年でオリジナル版「復活」の可能性
  • 4
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 5
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「原子力事…
  • 6
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 10
    すでに日英は事実上の「同盟関係」にある...イギリス…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 10
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 6
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中