最新記事

インタビュー

ドリブルデザイナーになり、全てを手に入れた岡部将和は「夢ノート」を書いていた

2021年4月12日(月)16時40分
吉田治良(スポーツライター)
ドリブルデザイナー岡部将和

SNSのフォロワーは約240万人、オンラインアカデミーも開催し、ドリブルデザイナーとして活躍する岡部将和氏 Courtesy Masakazu Okabe

<プロサッカー選手にはなれなかったが「挫折はしていない」――。今や日本代表選手にも指導を行うドリブルデザイナーが、初めて子供に向けた「マンガ本」を出した。少年少女たちに、自分の武器を見つけ、夢をかなえてもらうために>

ドリブルデザイナー、岡部将和──。

あるいはその職業も名前も、初めて耳にしたという人がいるかもしれない。しかし、サッカー界で、とりわけ将来のプロサッカー選手を夢見る子供たちとその親の間では、かなり名の知れた人物だ。

現在、YouTubeをはじめとしたSNSのフォロワーは約240万人(子供が大半を占めるというから驚きだ)にのぼり、そこで配信されるドリブル動画の閲覧数は実に3億回再生を超えるという。

この、「99%抜けるドリブル理論」を生み出したフットサル出身のドリブル専門指導者に心酔するトッププレーヤーは数多く、サッカー日本代表選手はもちろん、世界のスター選手にも個別で指導を行っている。

さらに、さまざまな悩みを持ったプレーヤーや指導者、保護者のために、インターネットを介したオンラインアカデミー、「日本サッカーオンラインアカデミー」も開設。およそ2000人の会員に向けて、実践的な問題解決策も提示している。

そんな岡部氏がこのたび上梓したのが、マンガ『サッカーがもっとうまくなる! 自分の武器の見つけ方』(CCCメディアハウス)だ。

これまでテクニック中心の書籍はいくつか世に送り出してきた岡部氏だが、本書はそれとは一線を画す、ある意味、子供たちとその親に贈る「教育本」に近い。

サッカー指導者というより、優しい先生のような柔らかな空気をまとった岡部氏に、著書に込めた想いから教育哲学、さらには日本サッカー界で注目のドリブラーに対する評価まで聞いた。

──過去にドリブルテクニックを解説された著書はいくつかありますが、今回の書籍はこれまでとは少し色合いが異なりますね。

ひとつはマンガがメインであること。自分もそうですが、マンガから学ぶことって結構多いんです。特に子供たちにとっては入りやすいんじゃないかと思います。

soccerbook20210412invu-2b.pngsoccerbook20210412invu-3.png

主人公は14歳の「岡部将和」! マンガと解説・コラムで構成され、難しい漢字にはふりがなが振られていて子供でも読みやすい『自分の武器の見つけ方』より

──岡部さんご自身の経験も内容に反映されている?

主人公の少年は、がむしゃらに好きなことを追いかけていく、努力家タイプのキャラクター。一方で、そのライバル的な少年は、もともと才能に恵まれているんだけど、両親を喜ばせたいという想いに縛られて、心からサッカーを楽しめなくなってしまっている。

僕自身、小学校・中学校時代はサッカー的にはエリートコースを歩んでいたので、どちらかと言えばライバルの子に近かったんです。でも高校生になって、純粋にサッカーを楽しむことや、仲間に助けられながらプレーする喜びに気付いてから、主人公側のキャラクターに変わっていった。

両方の気持ちが分かるからこそ、描けた部分はあると思っています。

──生まれながら才能に恵まれている子は少数派ですよね?

才能を褒められて育った子は、多くの場合、どこかで挫折を味わいます。ただ、その時に忘れないでほしいのが、楽しむことであり、サッカーを始めたときの気持ちであり、ご両親への感謝なんです。

──楽しむ気持ちは、勝利至上主義の中ではつい忘れがちになりませんか?

僕自身、プロになるために全ての時間をサッカーに費やそうと考えていた人間でした。結局それは叶いませんでしたが、それでも逃げずにサッカーと向き合ってきたからこそ、今こうしてドリブルデザイナーになって、サッカー選手として得たかったものが全て、手に入れられた。

つまり、サッカーがダメだったら、人生までおしまいというわけではないんです。「幸せになるために、好きなことをする」のであって、それが自分の場合はサッカーだったということ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB利下げ、大幅な見通しの変化必要=アイルランド

ワールド

台湾輸出受注、10カ月連続増 年間で7000億ドル

ワールド

中国、日本が「間違った」道を進み続けるなら必要な措

ビジネス

26年半ばの金目標価格4500ドル、300ドル引き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中