最新記事

BTSが変えた世界

BTSブームも牽引、Kポップダンスを陰で支える振付師

BEHIND K-POP'S VIRAL CHOREOGRAPHY

2020年12月1日(火)18時00分
レイン・バンデンバーグ

NYのタイムズスクエアでパフォーマンスをするBTS AP/AFLO

<Kポップの魅力の1つは計算し尽くされたダンスだが、その戦略に貢献しながら注目されていない真の功労者がいる>

Kポップは歌と魅惑的な雰囲気とアイドル性だけでなく、高度な振り付けのシンクロダンスでも知られている。しかし、その振り付けには爆発的なブームを生む力があるにかかわらず、グローバルな人気を支える振付師は業界でないがしろにされている。

Kポップグループの公式ミュージックビデオ(MV)の大半には、「公式振り付けMV」や「パフォーマンスビデオ」が付いている。BTS(防弾少年団)など多くのグループは、振り付け関連の動画の数が公式MVを上回る。

各曲にもそれぞれダンスの練習映像があり、メンバーがスタジオで踊る姿が収められている。固定カメラで撮影されたシンプルな動画で、まねして練習しやすいように、反転させたミラーリング動画をファンたちが作っている。

このダンス動画が大きな武器になる。その威力をまさに体現しているのがBTSだ。例えば、アメリカを拠点とするキーオン・マドリッドが振り付けを担当した「Fire」は、公式MVのYouTubeの再生回数が6億6000万回、ダンスの練習動画が5600万回、ライブパフォーマンスが9700万回、ミラーリングダンスの練習用動画が8100万回。1曲の動画4本で計8億9000万回以上、視聴されている。

(BTS「Fire」の練習動画)

Kポップの全ての曲が、「Fire」のように世界的なヒットになるわけではない。しかしダンス動画のフォーマットが持つ可能性は、より柔軟な戦略に対応できる。BTSも、例えば「Save Me」は、公式MVはあるがダンス練習動画はない。「Silver Spoon」は公式MVはないが、ダンス練習動画の再生回数は3300万回、ミラーリングダンスの練習用動画は1億5000万回を超えている。

練習映像とミラーリングダンスの再生回数の差は、ファンが振り付けを見るだけでなく、自分たちも練習してさらに楽しんでいることの表れかもしれない。その好例が「ランダム・プレイ・ダンス・チャレンジ」だ。これはKポップの曲がランダムに流され、振り付けを知っている参加者が自由に踊るイベントで、台湾やアメリカなど各地で開催され、多くのファンを集めている。

ダンスチャレンジの発祥は、韓国のトーク番組の人気コーナー「ランダム・プレイ・カッツ」だ。出演者の曲の一部が突然流れて、メンバーがぶっつけ本番で踊りだす。

大規模なイベントだけではない。ベトナムブリュッセルオーストラリアなど世界各地から、街中で振り付けを忠実に再現する動画「Kポップ・イン・パブリック」が投稿され、数百万回の再生回数を記録している。

Kポップのグループは、ダンスチャレンジを積極的に仕掛けている。BTSの大ヒット曲「IDOL」の公式MVの再生回数は、わずか4カ月で3億1200万回を記録。大物ラッパーのニッキー・ミナージュをフィーチャーしたバージョンは、「#アイドル・チャレンジ」と題してソーシャルメディアでダンス動画の投稿を募ったプロモーションも絡めて1億回に達している。

(BTS「IDOL」)

昨年9月にはBTSのリードダンサーとして知られるJ−HOPEが、人気ポップシンガーのベッキーGとのコラボで、2006年の大ヒットナンバー「Chicken Noodle Soup」のリメーク版を発表。「チキンヌードルスープ・チャレンジ」の下で、著名な振付師によるリメークやカバーが続々と生まれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

外貨準備のドル比率、第3四半期は56.92%に小幅

ビジネス

EXCLUSIVE-エヌビディア、H200の対中輸

ワールド

25年の中国成長率、実際は2─3%台か 公式値の半

ビジネス

利下げしなければ、景気後退リスク増大─ミランFRB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中