最新記事

映画

韓国、コロナ禍の釜山国際映画祭 オンラインで国境越え観客も交流、新たな道示す

2020年11月6日(金)11時40分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

舞台挨拶をオンラインにしてウィズコロナ時代の映画祭を模索した釜山国際映画祭 MBC Busan / YouTube

<新型コロナのパンデミックで世界の映画界が停滞した2020年。アジアを代表する映画祭は何を見せてくれたのか>

今年はコロナウィルス感染拡大で、これまでに前例のないほど混乱の1年となった。世界の映画祭は次々と開催延期や中止、もしくは異例のオンライン開催を発表せざるを得ない状態だった。

世界3大映画祭の一つ「カンヌ国際映画祭」が5月に開催されるか否か、世界中から注目されていた頃が今となっては懐かしい。結局、今年のカンヌは開催中止となり、6月にカンヌフィルムマーケットのみオンラインで行われた。9月に行われたカナダの「トロント国際映画祭」は、劇場定員を50人に減らし、マスクを義務化、オンラインとオフライン併用した上映での小規模開催で行われた。

アジアの映画祭も中止や延期

アジアの映画祭も軒並み中止や延期を発表した。上海国際映画祭は、6月から7月末に変更され、4月の香港国際映画祭も規模を縮小した形で開催。どちらもオフラインを極力避ける方向でイベントスケジュールが組まれた。

国際映画祭の楽しみといえば、各国からやってくるゲストだが、今年はコロナによる感染対策のため、国外はもちろん国内のゲストの訪問も少なく、オンラインでの舞台挨拶があればいい方で、基本的に映画の上映のみを中心に開催された映画祭がほとんどだった。

そんななか、今やアジアを代表する映画祭に成長した「釜山国際映画祭」は今年どうなるのか、各国の映画関係者たちからは注目が集まっていた。映画祭期間中に行われるフィルムマーケットでも、アジアを中心とした映画の買い付けには、下半期の重要な役割を果たす市場である。

中止か開催か、ギリギリまで憶測が飛び交っていたが、結果予定より2週間遅らせ、10月の21日より9日間いつもより小規模での開催に踏み切った。映画祭の期間中に行われるイベントや企画は中止されたが、映画界に元気がない今、多くの映画ファンに喜ばれ、成功的に幕を閉じた。

今回は、そんなコロナ禍での異例の開催となった今年の釜山国際映画祭の様子を見てみよう。

コロナ禍でも客席を埋めた映画ファン

今年は、メイン会場であるシネコン「映画の殿堂」6スクリーンで68カ国から192作品の映画が公開された。ちなみに昨年は、85カ国303作品の上映だった。累計観客数も1万8311名と、昨年の18万9116名と比べると約10分の1となってしまった。

だが、上映館数と数席飛ばしの客席数を考えれば納得がいく。それどころか、使用座席の稼働率では、なんと同映画祭史上最高の92%を記録し注目を集めた。

コロナ対策でも数々のアイデアで世界を驚かせた韓国だったが、映画祭の開催でも数々のアイデアが話題となった。

まず、映画祭のチケットは、完全オンラインとなり人との接触無しでのチケッティングが行われた。元々韓国ではチケットレスが進んでいたため、スマートフォンでの発券システムも問題なく受け入れられたようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中マドリード協議、2日目へ 貿易・TikTok議

ビジネス

米FTCがグーグルとアマゾン調査、検索広告慣行巡り

ビジネス

中国新築住宅価格、8月も下落続く 追加政策支援に期

ワールド

北朝鮮、核兵器と通常兵力を同時に推進 金総書記が党
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中