最新記事

映画

歓迎、伯爵家ご一行様! 『ダウントン・アビー』が映画で帰ってきた

A Return to Downton Abby

2020年1月10日(金)18時45分
ジューン・トーマス(ジャーナリスト)

英国王夫妻の来訪でダウントン・アビーに騒動が持ち上がる ©2019 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

<貴族と使用人の生活を描いた大人気ドラマの映画版は新鮮味のなさが魅力>

ロンドンからヨークシャーの貴族の邸宅へ送られる1通の手紙──映画『ダウントン・アビー』の冒頭シーンは、テレビシリーズの視聴者(きっと観客の大半がそうだろう)ならピンとくるだろう。

思い返せば、2010年に放送開始したドラマの第1話も、グランサム伯爵一族が暮らす邸宅ダウントン・アビーに届く知らせで幕を開けた。相続人で、長女メアリーの婚約者がタイタニック号沈没で死亡したと告げる電報だ。

この悲劇で始まった愛と法律にまつわる難題続きの物語は6シーズン、計52話にわたって続いた。最終話が終わる頃には、原案・脚本・製作担当のジュリアン・フェローズならではのメロドラマ的展開の繰り返しに、上流階級の生活に飽くなき好奇心を持つはずの筆者もうんざりだった。

ところが、映画化で素晴らしい変化が生まれた。冒頭のシーンがいい例だ。手紙が運ばれる一連の場面は劇的で効果的で、スリルに満ちている。

厚みある描写はないが

今回の知らせは打って変わって明るい。ヨークシャーを訪問する英国王と王妃がダウントンに宿泊するというのだ。

ダウントンの面々を再び紹介されるのは、かつての隣人に出くわすようなもの。見覚えはあり、彼らの嫌なところも記憶にあるが、名前は思い出せなかったりする。

映画版の脚本も手掛けたフェローズは、それを当て込んでいたのだろう。料理長助手デイジーの過去など覚えていなくて大丈夫。いや、むしろ忘れていたほうがいい。シーズン6の終わりでダウントンを去ったはずなのに、映画でのデイジーは相変わらず結婚に後ろ向きな料理長助手だ。

伯爵家の人々についても同様。伯爵の母バイオレットと宿敵兼友人イザベル、メアリーと妹イーディスの関係は彼女たちの表情を見れば分かる。

映画版はストーリーが冴えている。意外性があるからではなく、登場人物全員が予想どおりの行動をするからだ。とりわけ興味深いのが使用人たち。英国王夫妻の来訪にわくわくしていたのに、従者が随行するために自分たちの出番はないと分かると、お得意の悪だくみを始める。

これこそ、フェローズ的世界の真骨頂だ。使用人たちが対決する相手は支配層ではなく、使用人という同じ立場の平民。王家の従者らが滑稽なほど傲慢で不愉快な一方、王族は誰もが高貴な精神の持ち主として描かれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 10
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中