最新記事

映画

配信サービス全盛の今、映画館はどこへ向かう? ビジュアル重視の韓国、定額制のアメリカ

2019年10月7日(月)18時13分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

観客を取り戻そうと映画業界はさまざまな映画鑑賞のスタイルを提案している。Shaiith - iStockphoto

<あらゆるコンテンツがスマートフォンに収まり個人で楽しむ時代。リアルのサービスを提供する映画館はどうやって観客を振り向かせようとしているか>

「映画を観る」という言葉を聞いて、もう「映画館に行く」という意味で捉える人はどのくらいいるだろうか? 今や映画を観る方法は様々だ。観客が映画を観る環境の選択肢がどんどん広まっている。特に、アマゾンプライムビデオやネットフリックスなど、ネット配信サービスが定着したことも大きな変化だと言える。日本はもとより韓国でも、わざわざ時間を調べて映画館に足を運び、1本の映画に千円近くを払う「映画館で観る映画」は時間とお金を浪費する贅沢な娯楽になりつつある。こうしたなか、映画館は観客を少しでも呼び寄せるため、様々な工夫を始めているようだ。

数年前、韓国で寝ながら観られるベッド型の客席のある映画館が話題となりSNSを中心に話題となったが、いまやベッド型座席は珍しいものではなくなってしまった。韓国では、ここ数年ベッド型座席に負けないユニークな映画館が続々と誕生している

映画館についてのアイデアを公募、実現化

韓国最大のシネコンチェーンCGV江辺店では、「シネ&フォレ」という森と映画を組み合わせた映画館が誕生した。これは、2017年に行われたCGV新事業アイディア公募展から生まれた映画館で、まるで森の中で映画を観ている感覚になる。客席のソファーが人工芝の上に直接設置され、以前123席用だった館内に48席のみ座席が設置されているため、周りを気にせずリラックスして映画を観覧することができる。そのこだわりは見た目だけではない。室内の酸素濃度を森の中と同様21%に上げているという。一般的なソウルの街中の酸素濃度は18~19%。2~3%の差だが、これがリラックス感を更に高めると、来館した観客に大好評のようだ。

newsweek_20191007_181836.jpg

森をイメージしたCGV「シネ&フォレ」。現在は江辺以外にも展開され、CGVベトナムでも導入している 딩고 트래블 / YouTube

同じくCGVの往十里では、こちらも「リラックス」をテーマに、まるで自分の家でくつろぎながら映画を観ることができる「リビングルーム」型の映画館が誕生した。ピンクの家風の扉を開けると、席ごとにインテリアが違った造りになっており、ソファーやテーブル、照明などが置かれている。さらに、この映画館の特徴はこれだけではない。なんと、映画が上映されている間、館内の照明はすべて落とされず明るいまま。そして、携帯の使用も可能だという。技術の進歩で、暗くなくても上映可能なLEDスクリーンを使用しており、明るい場内でも通常と同様に観覧可能である。また、前の席との間に壁がある為、前方で携帯電話を使用しても画面の明るさが邪魔にならないように座席設計されている。今までの映画館でのタブーにあえて挑戦して観客のニーズにこたえている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国際司法裁、ミャンマーのジェノサイド訴訟で1月審理

ワールド

トランプ氏写真、削除後に再掲載 司法省公開のエプス

ワールド

中国大豆輸入、11月は3カ月連続で米国産ゼロ 南米

ワールド

米英首脳、ウクライナ和平巡り協議 「有志国連合」の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中