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ハリウッドも驚く韓国の映画撮影 日韓スタッフが衝突する共同制作の実態とは?

2019年9月4日(水)19時35分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

続々とハリウッド映画のロケ招致する韓国

韓国映画では近年ハリウッド俳優を起用するだけでなく、ハリウッド映画のロケ地誘致も国をあげて行っている。特に、麻浦大橋や江南のメインストリートを封鎖させて行われた『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は有名だ。この作品誘致のため、行政機関である韓国映画振興委員会は230万ドルの補助金を出し、2週間以上にものぼる韓国ロケの全面協力を約束して実現させた。その他にも、『ブラックパンサー』『パシフィック・リム』『ダウンサイズ』『シンクロナイズドモンスター』など、韓国で撮影された映画は増えている。

それでは、日本はどうだろうか? 多くのハリウッド映画にも日本は登場するが、その街並みはどこか違和感があることが多い。それは、リアルな日本ではなく外国人のイメージする日本の姿のように感じる。先ほど述べた『アベンジャーズ』シリーズだが、今年シリーズ最終作として公開された『アベンジャーズ/エンドゲーム』では日本が舞台のシーンがあった。しかし、これはアトランタで日本の街並みを再現したセットで撮影されている。更に残念なのは、そのセットが日本を忠実に再現したとはいうものの、日本人からするとどこか違和感のある「外国人が見た日本風セット」だったことだ。

国家レベルのバックアップのあるなしの差はあるが、韓国ロケとの大きな違いが見えた今回の『アベンジャーズ/エンドゲーム』。果たして日本でのロケ撮影はそれほどまでに難しいのだろうか? 筆者の友人で、同じく韓国映画界で日本人として活動してきた藤本信介さんに、日韓の撮影現場での違いなどをうかがってみた。

意外にも用意周到に絵コンテを準備する韓国映画

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日韓の映画現場で活動する藤本信介さん(本人提供写真)

現在、日韓で助監督業を中心に活躍している藤本さんは、韓国映画で429万人動員のヒット作『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)のほか、日韓合作『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』(キム・ソンス監督)、日本映画でありながら3分の2を韓国で撮影された『アイアムアヒーロー』(佐藤信介監督)など、日韓のスタッフが共同で制作する映画にも数多く携わってきた。


──今回ミーガン・フォックスが韓国とハリウッドの撮影現場の違いについて語っていたが、日本と韓国の現場で違いを感じたことはあるか?
「日本はCGが重要なシーンなどでは絵コンテを描くが、基本的にはなし。しかし、韓国ではどんな映画でも基本的に絵コンテを準備し、現場に入る前にある程度何カットを撮る必要があるか、どういう順番で撮影するかをシュミレーションする。絵コンテは基本的に監督とカメラマンが相談して決める。日本の場合は、現場で役者に段取り(リハーサル)をしてもらって、その動きに合わせて、監督がその場で決めることが多い」

──監督によって違いはあるだろうが、日本よりもロケしやすいというイメージがある韓国だけに、撮影も自由な雰囲気かと思いきや、意外にもカメラワークなどは日本よりしっかり決めて撮影に臨むようだ。
「日本は俳優の動き、演技を重要視し、韓国は監督と撮影監督の描きたい絵に合わせて俳優を動かす。撮影監督も一緒に絵コンテを決めるから、演技や感情的な部分に加えて、絵的に美しく面白いカメラワークが出来るのだと思う。どちらが良いとは決められないが、視覚的な部分を考えると、絵コンテがあったほうが幅広いカメラワークができるのではないか」

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