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パックンのお笑い国際情勢入門

「日本のお笑いって変なの?」をパックンが外国人3人と激論しました

NOT STANDUP, SIT DOWN COMEDY CHAT

2019年8月5日(月)18時05分
ニューズウィーク日本版編集部

「どうやって自殺したか知ってる?」「頭に3発撃った」

チャド 内容について言うと、オーストラリアは両極端。下世話な下ネタか、インテリが政治、社会を斬るネタばかり。そんなのばかりじゃ面白くないといって、フランスで流行っている番組を持ってきたら、全然人気が出ず、打ち切りになった。オーストラリア人は社会性の強いお笑いしか求めていないという結果になった。

パックン へぇ。

チャド これ、ABCの偉いさんに聞いたんです。オーストラリア・ブロードキャスティング・コーポレーション。

パックン じゃあ、下ネタは日本と中東、それから中国も、あまりオンエアはしない。飲み会では盛り上がるけれど。

チャド 日本にもないわけではない。(下ネタは)人間の根本だから。

パックン そうだね。人間はそこから産まれるからね。それでこれが本題。政治はどう? 中東で政治的なネタを扱うことはできる?

ナジーブ アラブ世界では、公にできることと、プライベートでできることのギャップは大きい。

パックン 何においても?

ナジーブ 何においても。お笑いから少し離れるが、ある思想家が出した70年代の有名な本があって、日本語で言うと『3大タブー』。政治、宗教、性、この3つが私たちの文化ではタブーになっていると。それで僕は、そのタブーがプライベートでユーモアの題材になっているのだと思う。

パックン プライベートではむしろタブーに挑戦すると。

ナジーブ これらはメディアでは出せない。プライベートで話すジョークは、この3つの題材しか思い浮かばない。そういう意味では、テレビに出るユーモアはみんなにとってちょっとつまらない。

パックン それは素人が言い合うものなの? それともプロが来て、こっそりやったりする? 闇営業とか多いんですか。

(一同爆笑)

ナジーブ プロがやるという感じではない。どんどんジョークが作られて、それがはやるわけ。

パックン みんなが言い合ってるんだ。じゃあ、そのはやりのジョークを1つ教えてください。

ナジーブ 例えば、シリア政権が時々、みんな悪いことをやってるのに、その中から1人を選んでスケープゴートにする。この間は、農業大臣が汚職で有罪になった。農業大臣の10倍ぐらいお金を盗んでいる人はたくさんいるのに、国民の不満のはけ口として。結局その大臣は汚職がばれて「自殺」したんだけど、誰もが公安に殺されたということを知っている。それで人々が話している。「大臣がどうやって自殺したか知ってる?」「どうやって?」「頭に3発撃った」

チャド 自分で3発も撃てるわけないのにね、と。

パックン なるほどね。

 で、その3発は「散髪」とかけてる?

パックン (髪のない)ナジーブさんにその「散髪」はダメでしょ!

ナジーブ もう1つ、その次に副大統領が同じように有罪になりそうだったけれど、彼はフランスに亡命しちゃった。彼に対するジョークは、日本語でなんて言えばいいかな、「その人は自殺したかったけど、オフィスにいなかった」。分かる?

パックン 面白いなぁ。自殺なんだけど、自殺に見せかけた他殺で、その人が見つからないから「自殺ができない」。日本だったら「責任を取って辞任したかったけれど、部下が見つからなかった」となるかな。

編集者 うまい!

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