最新記事

パックンのお笑い国際情勢入門

「日本のお笑いって変なの?」をパックンが外国人3人と激論しました

NOT STANDUP, SIT DOWN COMEDY CHAT

2019年8月5日(月)18時05分
ニューズウィーク日本版編集部

辛い時期にこそジョークがはやる、日本にもそんな時期があった

チャド お笑いはエンターテインメントなんだけど、内戦が激しいような国では、人々が辛い生活を送る中でちょっとした光というか、そこで生きていくために必要な薬みたいなイメージ。シリアの実態を知らないけれど、そういうものですか。

ナジーブ 恐怖から解放されるため、信頼できる仲間内で言うもの。もちろん政府の人間の前ではそんなジョークは言わない。この人の前では言えるということで、絆ができる。

パックン 欧米でも辛い時期にこそジョークがはやる。ナチスの時代にもいっぱいジョークが生まれた。この間(ジョーク本著者の)早坂隆さんが言っていたのは、日本でも大東亜戦争のときに東條英機をばかにする替え歌を作っていたと。そういうときこそ笑いが欲しい。

そのナチス時代にできたものか、その後できたかは分からないけれど、600万人のユダヤ人が殺された、そんな中で生まれたジョークもある。

ユダヤ人2人がヒトラーを暗殺しようと企んでいた。ヒトラーの動向を調べて、何時何分にどこそこを通るということが分かったので、スナイパー銃を持って隠れて待っていた。ヒトラーが3時に来るはずなのに、30分たっても1時間たっても2時間たっても、なかなか来ない。それで1人がもう1人にこう言う。「全然来ないなぁ」「そうだなぁ」「無事だといいけど」

(一同爆笑)

パックン ユダヤ人は人を気遣う、相手の健康・無事を気にする傾向があるという特徴を生かしている。殺したいのになんで無事を祈るんだという矛盾。ちょっと笑えるよね。

政治も宗教も、プロがやる下ネタも、全裸の番組もありな欧米。それとは対照的な中東、中国。あと中国の場合は検閲も厳しい?

 検閲があるからこそ、人々がそういうものを求めるんじゃないですか。例えば地上波では、おっぱいとおっぱいの谷間すら見せちゃいけないんだよ。

パックン え、(谷間が)ないんじゃなくて? と、ナジーブさんが言ったことにして。

(一同爆笑)

 まぁ、ダメなんだよね。芸術活動だと卑猥なものも、「これは芸術だ」と言って出すんだけど。

チャド ちなみに、オーストラリアでは国営放送に近いABCが一番アグレッシブなんです。民放は広告ありきなので保守的になってしまう。国営放送こそが、お笑いの分野でも一番ガンガンやっている。

パックン イギリスのBBCもそうですよね。

編集者 日本のNHKも若干その傾向があるんじゃないですか。

パックン 僕らが世に出たお笑いブームは、NHKさんが『爆笑オンエアバトル』をやったから生まれたんですよね。その前にはやったのは(民放の)『ボキャブラ天国』で、あれはネタ番組であって、コント番組ではない。ネタをまるまる見せるという『爆笑オンエアバトル』は、NHKさんの勇気ある決断で生まれた番組だった。

※座談会・後編:日本人は「政治に興味ない」「専門的に生きている」──外国人のお笑い座談会より

【関連記事】ウーマン村本×パックン「原発や基地をやるきっかけは堀潤さん」
【関連記事】ウーマン村本×パックン「カウンターパンチは全部ありだと思う」

2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中