最新記事

エンターテインメント

デーブ・スペクター「吉本」「日本の芸能事務所」「テレビ局との癒着」を全て語る

2019年7月26日(金)17時55分
小暮聡子(本誌記者)

芸能事務所とテレビ局の癒着を生む「接待文化」

――日本の芸能人は組合に入っていないのか。

日本の芸能界には組合がない。ないほうがいいというのは、実力があっての組合なので、日本には才能がない人が多過ぎて、組合に入ったら事務所との上下関係が狂ってしまって事務所はますますやる気をなくすだろう。

今の日本の上下関係については直さなければいけないとみんな言っているのだが、本音は違うと思う。下手な人を使い続けるのなら、彼らが事務所の言いなりになるのは仕方がないとみんな分かっている。今はきれいごとを言っているだけ。

――今回の騒動をきっかけに、吉本を含め、日本の芸能界は変わると思うか。

変わらないと思う。一部の事務所、例えば小さいモデル事務所の中にはすごくシビアに、あまり人を入れないとか欧米的にやっているところもあるが、それはほんのわずか。僕は変わらないと思う。

――テレビ局が吉本の株を持っていることなど、吉本とテレビ局の関係もクローズアップされている。テレビ局が芸能事務所に、才能がある人しか使わない、と言うことはできないのか。

言えばいいのだが、言わない理由は簡単だ。もちろんテレビ局側もそうしたほうがいいと、たぶん常識的には分かっている。しかし、これは芸能界に限らないのだが、日本にはトップとの接待文化がある。

特に芸能界は接待文化。だって安倍総理が毎晩いろいろな人とご飯食べているくらいだ。そうすると、どうしてもなぁなぁに、ずぶずぶの関係になってしまう。表現は悪いが、癒着が出てくる。さりげない癒着、つまり忖度が多いと思う。

接待文化がある限り、事務所の意向が通るようになってしまう。広告代理店もスポンサーもみんな夜会うからいけない。僕は日本の社会をよくするには、夜間外出禁止令を作ったほうがいいと思っている。19時前に家に帰るようにしよう、と。会社の社長全員に警備員を付けて自宅に直帰しているか見張らせるんだと。あるいは足首にGPSをつけて、ちゃんと帰ったか分かるようにするとか。

もしくは、接待ではなくランチがいい。ハリウッドのやっていること全てがいいとは言わないが、ニューヨークなどはみんなランチかブレックファスト。接待は大きい。日本でテレビ局以外の企業でもいろいろな癒着が生まれるのは、夜に和食やお座敷に行くからだ。ゴルフ接待もある。

そういうことしていると、うちのあの子を使って、となってしまう。アメリカの場合は何が違うかと言うと、映画スタジオやテレビ局のトップ陣営というのはものすごい大金を稼いでいる。正社員というシステムがないので、ディズニーでもABCでも、日本円にすると億単位のお金をもらっている。彼らに接待しても喜ばない。

日本のテレビ局も給料は高額だが、それでも欧米と比べると桁が違うのでやっぱり接待に弱い。もちろん全てが悪いとは言わないが、接待文化によって結局ものごとを言えない空気が作られてしまう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

印マヒンドラ&マヒンドラ、EVに3年で14.4億ド

ワールド

イスラエル、トルコとのFTA廃止へ 貿易停止措置に

ワールド

イスラエル、第1四半期GDPは+14.1% 個人消

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米株安の流れ引き継ぐ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中