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在日外国人

ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(1/3)

騙されて来日し、波乱万丈の末に日本で日中バイリンガルの保育施設をつくった中国人女性の物語

2015年9月9日(水)16時40分

自分だけじゃない 日本での子育てに苦労し、その後、似た境遇にある母親たちのために奔走するようになった(写真は本文と関係ありません) Shunyu Fan – iStockphoto.com

 世界の耳目を集めた北京での対日戦勝記念式典が終わった。日本と中国の関係は、国レベルで見るかぎり、決してよいとは言えない。だが、個人レベルではどうだろうか。

 この数年で撤退した日本企業も少なくないとはいえ、中国には今も13万人近い日本人が住んでいる。仕事で訪れる人もいる。一方の日本はといえば、今や中国人の人気の旅行先だ。それだけでなく、約70万人ともいわれる中国人が、日本で学び、働き、暮らしている。国交正常化から43年を経た両国の紛れもない現実だ。

 しかし、約70万人もいるはずの在日中国人たちのことを、多くの日本人はよく知らない。私たちのすぐ隣で、彼らはどう生き、何を思うのか。北京出身で、来日30年になるジャーナリストの趙海成氏は、そんな在日中国人たちを数年がかりでインタビューして回り、『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(小林さゆり訳、CCCメディアハウス)にまとめた。

 十人十色のライフストーリーが収められた本書から、日本で4つの保育施設を経営する女性の物語を抜粋し、3回に分けて掲載する。株式会社愛嬰の代表取締役、応暁雍(イン・シャオヨン)さんは、1970年に中国浙江省の寧波で生まれ、97年、研修生名義で騙されて来日した。日本への思い、故国への思い、狭間に生きる葛藤――。彼女のライフストーリーから、見えてくる世界がある。

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『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』
 趙海成(チャオ・ハイチェン) 著
 小林さゆり 訳
 CCCメディアハウス

◇ ◇ ◇

 1997年、寧波出身の20代の女性が研修生名義で来日し、騙されてホステスとして働いた。やがてそこを逃げ出し、日本人と結婚して子どもに恵まれる。だが主婦になったものの、育児ストレスや夫との不和で極度のうつ病に。睡眠薬を飲んで子どもと無理心中をはかろうとまで思いつめてしまう。

 それから18年たったいま、彼女は日本で正規の保育園を4園経営する実業家になっている。その紆余曲折の経験談を聞けば、誰しもが胸を打たれることだろう。この女性―─応暁雍のストーリーには、取材した私自身もたいへん感動させられた。

 以下は、彼女のインタビューをまとめたものである。

騙されてホステスになり、逃げ出した!

 私は1970年生まれ。幼少のころからの教育で日本に偏見を持っていたので、日本へ行こうとは考えたこともありませんでした。ある日、同じ工場で働く女性の先輩がふいにいいました。「外国で技術研修を受けるつもりだ」と。電子関係の業種で、当時はそのチャンスがあったのです。そこで彼女につきそって出国労務説明会に参加。自分も試しにと、先輩と一緒に日本の招聘機関の面接試験を受けました。その結果、彼女は落とされ、私は合格してしまったのです。

 日本へ行くことに家族はみな反対し、とくに祖母の反対は猛烈でした。というのも祖母は、日本の中国侵略で悲惨な体験をしていたからです。若いころ日本軍に家を爆撃され、一家は逃げまどいました。それから日本人が町に攻めてきたので、防空壕に隠れたそうです。そのことになると、祖母の話は止まりません。でも私は家族の忠告に耳をかさず、頑として出国の意志をまげなかった。なぜなら私は200人以上から選ばれた、3人のうちの1人だったからです。選ばれたからには、もしやご縁があるのかもしれない。まずは行ってみよう、ダメなら戻ればいい。そんな考えで日本にやってきました。

 ところが日本に着いてから、騙されていたことに気づきました。どこが電子工場の研修生でしょう。仕事は風俗業のホステスにすぎなかったのです。空港を出ると、迎えにきた車でそのまま田舎のアパートに連れて行かれました。アパートを管理していたのは台湾人です。私たち3人の寧波出身の女の子はそこに落ち着くやいなや、夜にはホステスの仕事に就かされました。

 こんなことを家族に知られたら大変です。これからどうしよう。逃げて帰国しよう。日本語が全くわからなくて、どうやって逃げようか。しかもパスポートは取り上げられてしまったし......。やむを得ない状態で、2カ月ほど過ごしました。ある日、バーで初めて中国人客に出会い、ワラをもつかむ思いで、脱出を助けてくれるか尋ねました。その男性はなかなかいい人で「君を連れて出ることはできないが、電車のルートなら教えられる。必要な交通費もあげよう」といってくれました。また、東京にいる友人を紹介してくれ、「困ったことがあれば彼を頼っていいよ」と。こうして私はついに1人で逃げ出したのです。

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