最新記事

映画

いかれた『フィルス』の愛すべき世界

2013年11月19日(火)16時20分
大橋 希

──ブルースみたいな人は、本や小説の中では「イヤだけど愛すべき存在」みたいになるが、現実世界で身近にいたら嫌ですよね?

ウェルシュ だからこそみんな映画を見て楽しめるんだと思う。実際にああいう人がいたらとんでもなくストレスに感じるし、恐怖も不安も感じる。でもスクリーンでみれば、その人の感情は感じるけど、安全な距離を保つことができる。どきどきさせられるけど、相手の行動の結果を引き受けなくていい。
 
『フィルス』は男性が喜ぶ映画かと思ったが、ふたを開けてみたら女性も見に来ていた。男性は、こういう極端な人物が堕ちていくのを見るのが楽しいんだと思う。女性はたぶんみんな、人生で一度くらいはああいうバッドボーイとの恋愛経験があって、「私も同じような経験したわ」「ああいう人はもうこりごり。でも、もしかしたら彼はまだ私のことをあきらめ切れずにいるかも」って考えて楽しんだのかもね。

ベアード この映画の中で、メアリーだけはブルースをヒーロー視している。自分の夫を救おうとしてくれたブルースは彼女にとって、輝く武器を持った騎士なんだ。みんなは嫌っているけど、奥さんだったり、母親だったり、誰か一人だけはその人のことが好きというのはよくあること。

 人間というのは全部いいとか、悪いとかじゃない。すごくいやな奴でも一つはいいところがあったりする。僕が信じるに、生まれつき嫌な奴はいない。人生でいろいろあるうちにそうなっていく。この映画でも、どうしてブルースがあんな風になったのかが見えてくる。

──確かにブルースの過去が分かる場面が一瞬があり、そこから彼に親近感を覚えた。

 原作ではあの場面はもっと後に出てくる。でも映画ではずっと前に持ってきて、観客がブルースに共感できる装置として使った。

──アーヴィンは「テディベア」ではなく、クレイジーな人だと思っていたから用意してきた質問がある。ふさわしくないかもしれないが......酒とセックス、音楽、ドラッグの中で「これからの人生で1つだけ許す」と言われたら何を選ぶ?

ウェルシュ もちろんセックス。

ベアード セクシー・テディベアだね(笑)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中