最新記事

映画

ジェームズ・ボンドを脅かす悪玉が最高

2012年12月14日(金)16時03分
ケビン・ファロン

もう1本の映画にも注目

 とりわけエロティックなシーンは、シルバとボンド(!)の絡みだろう(熱烈な007ファンは冷や汗が出るかもしれない)。2人が初めて対面するシーンで、シルバは後ろ手に縛られたボンドの顔、そして胸をなでる。まるでボンドガールの豊満な胸をなでるかのように......。

 さらに意味ありげなことを言うシルバに、ボンドはクールな顔で言い放つ。「私に経験がないとでも?」
『スカイフォール』のメディア向け試写が始まると、このシーンはたちまち大きな話題となった。そして宣伝のために訪れる都市で、バルデムが一番よくされる質問は「シルバはゲイなのか? そしてボンドも......?」になった。

「さあね」と、バルデムはにやりと笑いつつ、ある記者会見でクレイグが語った言葉を紹介してくれた。「シルバはゲイなのではないかという人がいるが、私に言わせれば、彼にとって相手は人間でも何でもいいんじゃないかな」

「そのとおりだ」と、バルデムは言う。「この男は人里離れたところに暮らしていて、ありとあらゆる不快なことに手を染めているからね」

 では「ジェームズ・ボンドのゲイ疑惑」が騒ぎになっていることについてはどう思うのか。「どう解釈するかは人それぞれだ」と、バルデムは受け流す。

 11月には、バルデムが関わったもう1つの大きな映画が公開された。アルバロ・ロンゴリアらと共同で製作したドキュメンタリー『ラスト・コロニー』だ。

 映画のテーマは西サハラ問題。この地域はかつてスペイン領だったが、サハラ・アラブ民主共和国(亡命政府)とモロッコが領有権を主張して争い、10万人がアルジェリアの難民キャンプで35年以上も暮らしている。バルデムは4年前にキャンプを訪問して、難民たちのテントに寝泊まりして以来、この映画を作り始めた。

 映画では難民たちの厳しい暮らしとともに、この問題に世界の注目を集めて変化を起こそうとするバルデムとロンゴリアが、官僚主義の壁にぶつかり苦悩する様子が記録されている。

 ただし『ラスト・コロニー』が見られるのは今のところiTunes(アメリカ)のみ。世界80カ国以上で公開され、興行収入記録を塗り替えている『スカイフォール』とは大違いだ。

『ラスト・コロニー』はヒットを飛ばすためではなく、西サハラの人たちについてもっと関心を持ってもらうために作ったと、ハビエルは言う。「彼らは考え得る最悪の状況にいる。でも彼らには信念があって、世界がこの問題を解決してくれるのを待っている」

 『スカイフォール』で世界を混乱に陥れるテロリストを演じたバルデムは、実は世界を救おうとしているのだ。

[2012年12月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月ISM非製造業指数、52.4と8カ月ぶり高

ビジネス

米BofA、利益率16─18%に 投資家に中期目標

ワールド

トランプ関税の合憲性、米最高裁が口頭弁論開始 結果

ビジネス

FRB現行政策「過度に引き締め的」、景気にリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中