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韓流戦争映画はここまで来た

2012年3月16日(金)15時56分
グレイディー・ヘンドリックス(ニューヨーク・アジア映画祭共同創設者)

 南北統一への歩みは足踏みを続けたままだったが、韓国映画界はその日への備えをしっかりと進めていた。「北は悪、南は善」という神話に疑問を投げ掛け始めたのだ。

『二重スパイ』(02年)や『ペパーミント・キャンディー』(99年)は、韓国諜報部員による北の人間への拷問・虐待を描いていた。ブラックコメディーの『ユゴ 大統領有故』(05年)は、79年に朴正熙(パク・ヒョンヒ)大統領が韓国中央情報部長に暗殺された事件をテーマにした。

『シルミド』(03年)は、特殊部隊を編成して北の最高指導者、金日成(キム・イルソン)暗殺を図った68年の政府の極秘計画を暴露した。

戦争を美しく描かない

 例えばアメリカなら、オリバー・ストーン監督が『JFK』や『プラトーン』のような作品で時折、「政府公認」の歴史に挑むことがあるだろう。それが韓国では、主流の映画監督がはるかに頻繁に、歴史の真実を追い求めている。

『小さな池─1950年・ノグンリ虐殺事件─』(10年)は、朝鮮戦争中の米軍による韓国民間人の虐殺事件を豪華なキャストで再現した。『光州5・18』(07年)は、80年に軍が民主化要求デモを弾圧して約200人の死者を出した「光州事件」を、予算を惜しむことなく描き切った。『選択』(03年)は、共産主義のシンパだという理由で政治犯としては世界最長といわれる43年10カ月を獄中で過ごした金善明(キム・ソンミョン)の苦闘を描いている。

 しかし韓国では、多額の予算を投じてスターを起用した作品だけがヒットするわけではない。村の争いが拷問や殺人、ひいては共産主義の弾圧にまで発展した過程を描いた『ハルメ花』(07年)のような低予算のドキュメンタリーも、大きな反響を呼んでいる。

『高地戦』のチャン・フン監督は、この作品で戦争を美化しないことに心を砕いている。チャンの前2作は、政治や司法の場で対立する「フレネミー」(友であり敵でもある存在)を描いていた。新作の中で対立している南北朝鮮は「史上最大のフレネミー」だ。

 この作品では「ワニ中隊」の指揮官殺害事件と共産主義者への協力疑惑を調査するため、カン大尉(シン・ハギュン)が朝鮮戦争の前線に派遣される。カンはほんの20分で謎を解決するが、やがて目的の見えない任務に巻き込まれていく。過去1年半に30回にわたって奪ったり奪われたりを繰り返した小高い丘を、もう一度奪いに行けという命令を受けるのだ。

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