最新記事

テレビ

子供が熱狂!新アニメ「ウザいオレンジ」

不気味なフルーツたちが主人公の新感覚アニメがYouTubeで大人気。アメリカではテレビやおもちゃ業界にも進出する勢い

2012年2月20日(月)14時26分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

不思議な魅力 辛口ジョークを連発し、他のフルーツを侮辱しまくるオレンジは子供に大人気だ YouTube

 動画投稿サイトのYouTubeで公開中のアニメ『アノイング・オレンジ』をご存じだろうか。速射砲のようなジョークとギャグが売りで、子供たちに大人気。名前のとおり、ネット上で最もアノイング(うっとうしい)な存在だ。

 主役のオレンジはギャグを連発して、仲間のフルーツや食材を侮辱。最後はたいてい誰かがナイフで切り刻まれたり、粉々にされて終わる。キャラクターの顔は、本物の果物に声優の口と目をはめ込んでいる。番組の長さは約3分。ジョークのくだらなさは耐え難いほどだが、びっくりするぐらい人気がある。

 スタートは約2年前。今ではお気に入り登録者が230万人いて、これまでに10億回近く再生されている。ファンの中心は8〜13歳の子供たちだ。

『オレンジ』の生みの親は32歳のデーン・ボーディグハイマー。最初は冗談半分だったが、今では本格的なビジネスに成長。トイザラスとはキャラクター玩具の、百貨店のJ・C・ペニーとはTシャツのライセンス契約を結んだ。

 ボーディグハイマーと脚本担当のスペンサー・グローブは、アニメ専門のケーブル局カートゥーン・ネットワークとも契約。今年中に放送が始まる。

 ノースダコタ州出身でミネソタの大学で出会った2人は、自分たちの幸運がまだ信じられないそうだ。「『ワオ、どうしちゃったんだ。俺ら』って何度も言い合ってる」と、毎週更新されるYouTubeの動画をロサンゼルスで制作中のボーディグハイマーは言う。

 グローブもこう話す。「ずっと考えてるんだ。ある日、目が覚めたら今までのことはみんな別世界の話で、現実の僕はファストフード店でハンバーガーを焼いてるんじゃないかって」

テレビでの成功は未知数

 2年ちょっと前、MTVのリアリティー番組のスタッフとして働いていた2人は、短編ビデオを撮ってYouTubeに投稿した。何本かは注目されたが、大きな話題にはならなかった。

 ボーディグハイマーが最初の『オレンジ』をアップしたのは09年10月。「すぐに再生回数が100万を超え、200万、300万に増えて毎週100万回になった」という。数本を追加制作すると、再生回数はさらに増加。忙しくなったため、グローブを脚本家に起用して毎週金曜にエピソードを更新し始めた。

 2人は10年にそれまでの仕事を辞めた。現在の稼ぎについてはノーコメントだが、ボーディグハイマーいわく「十分に暮らせる額」だ。『オレンジ』がYouTubeで毎年稼ぎ出す額は、約86万5000ドルだという試算もある。

 カートゥーン・ネットワークとの契約でさらに大金が入りそうだ。局の依頼は、11分間のアニメ2本から成る30分番組を15話分。「これほど大きな文化現象を見逃す手はない」と、番組編成責任者のロブ・ソーチャーは言う。YouTubeのファンがテレビも見るかどうかは分からない。放送時間が長くなることに伴う工夫も必要だ。

 最近のYouTubeはテレビの2軍のような存在で、新人が腕を磨き、ファンをつかむ場になっている。ただし、両方で大成功を収めた例はまだない。

 グローブはテレビ用の脚本の約半分を書き上げた。一方で、YouTubeへの投稿も続けるという。最初は何カ月も脚本を書き続けたら飽きると思ったが、「どんどん面白くなる。これから最高の話を書ける気がする」と話す。

 ある意味で成功はもう決まっているのかもしれない。子供が夢中になり、親が困惑する番組はヒットの定番なのだから。

[2012年1月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-米ワーナー、パラマウントの買収案を拒否 ネト

ビジネス

独IFO業況指数、12月は予想外に低下 来年前半も

ビジネス

EU、炭素国境調整措置を強化へ 草案を正式発表

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中