最新記事

映画

『トワイライト』最新作は戦闘モノ!?

大ヒットのバンパイア映画3作目『エクリプス』は女性ファンを見捨てて男ウケを狙うアクションものに変身

2010年7月6日(火)18時25分
セーラ・ボール(エンターテインメント担当)

カレと見る? 最新作『エクリプス』は、ヒロインと美しきバンパイアの禁断の恋が魅力だった前2作とは様変わり © 2009 Summit Entertainment. All Rights Reserved.

 バンパイア映画『トワイライト』シリーズの最新作は、女性を置き去りにするような作品になるかもしれない――少なくとも、最新研究ではそう指摘されている。

『エクリプス/トワイライト・サーガ』の全米公開6月30日を前に、こんな研究が発表された(日本公開は11月13日)。シリーズ第3作のこの作品では、原作のロマンチックな持ち味は抑制され、アクション満載の戦闘シーンを前面に打ち出している。その過程で、女性ファンを切り捨てているというのだ。

 なぜ大事な女性ファンを裏切るようなまねを? 研究によれば、ハリウッドが「女性だけでなく男性にも受け入れられる作品でなければ成功とは認めない」からだ。

 それはまた手厳しいが、真実だけに痛いところを突いている。『エクリプス』は原作では人間の少女ベラ(クリステン・スチュワート)のロマンスの行方がテーマだが、映画はCGだらけのアクションもの。ベラを守るために天敵のオオカミ族と手を結んだバンパイアのエドワード(ロバート・パティンソン)に対し、戦闘態勢をあらわにするバンパイアのテロリスト軍団が牙をむく。

 米ミズーリ大学コミュニケーション学の3人の教授による研究をまとめた新著『トワイライトにかみつかれて――若者カルチャー、メディアとバンパイアシリーズ』によれば、同シリーズの1〜2作目は、ロマンス重視の原作に忠実だったという。

 メリッサ・クリック教授が主導し、ジェニファー・スティーブンス・オーブリー、エリザベズ・ベムモラウィッツ教授が加わった同著では、シリーズ3作品のプロモーション戦略についても研究している。映画予告編やその他の宣伝活動では、アクションを前面に打ち出しているのか、ロマンス重視で売り出しているのか、その路線は原作と一致しているのか、といったものだ。『エクリプス』に関していえば、一致していないというのが彼らの結論だ。

製作側が狙う「全方位型ヒット」

 予告編の分析は学術的考察の王道とは言えないかもしれないが、教授たちはこう主張する。『エクリプス』でロマンスが軽視されていることは、単にファンを苛立たせるだけではなく、重要なことを意味している。原作と映画1〜2作目は、飽くなき欲求に駆り立てられた女性ファンのおかげで予期せぬ爆発的な成功を収めた。だが映画界が何より求めているのは「全方位型ヒット」。老いも若きも、男にも女にもうける映画だ。

 夏のヒット作の多くは、若い男性向けに作られる(『トランスフォーマー』『アイアンマン』など)。そうすれば、若い女性もついてくるのが期待できるからだ。対して女性を対象に制作した映画は、男性の興味を引くにはまるで役に立たないとされてきた(『セックス・アンド・ザ・シティ2』がいい例だ)。

『トワイライト』シリーズは数少ない例外、というだけではない。事実上、女性ファンが築いた唯一の映画ブランドだといえる。その成功にもかかわらず男性の観客を呼び込もうとする姿勢は、ハリウッドがいかに女性を評価していないかという事実をあらためて思い起こさせる、と同研究は指摘する。

「残念なのは、すでに原作に熱烈に入れ込んでいる女性ファンが大勢いるというせっかくのチャンスをふいにしてしまったこと。彼女たちをないがしろにして、どれだけ男性ファンを獲得したかで成功を判断しようとしている」と、クリックは言う。

 この基準は、逆の場合には適用されないと、クリックは指摘する。「女性が『トランスフォーマー』を見たかどうかなど話題にならない。そんなこと誰も気にしないから」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、米CIAに停戦に向けた対話の用意示唆=報道

ビジネス

ミランFRB理事、年内利下げ継続を主張 「イラン攻

ビジネス

金利据え置きを支持、インフレ見通しはなお強め=米ク

ワールド

イラン作戦必要な限り継続、トランプ氏暗殺計画首謀者
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中