最新記事

映画

マクレガー、『天使と悪魔』を語る

最新作『天使と悪魔』で聖職者を演じた俳優ユアン・マクレガーが明かす撮影の裏側と映画をめぐる宗教論争、故郷スコットランドへの愛

2009年5月15日(金)18時02分

『ダ・ヴィンチ・コード』の続編『天使と悪魔』でマクレガーは教皇侍従カルロを演じる  ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

ユアン・マクレガーは特定のジャンルにはこだわらない俳優だ。ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』ではライトセイバーを振り回し、『トレインスポッティング』では麻薬中毒の若者に、インディーズ映画『ベルベット・ゴールドマイン』ではロック歌手イギー・ポップになりきった。

だから『ダ・ヴィンチ・コード』の続編『天使と悪魔』(ロン・ハワード監督、5月15日全世界同時公開)で黒い法衣をまとって神父を演じても、特段の驚きはない。故郷スコットランドの独立問題や伝統衣装のキルト、そして映画をめぐるカトリック教会の論争について、本誌ニッキー・ゴスティンが聞いた。

――今回の映画はあまりメディアが取り上げず、大きな論争にならなかったが。

物議をかもすような映画じゃないし、そんな要素はない。

――ただカトリック教会は気に入らなかった。

教会は前作『ダ・ヴィンチ・コード』が大嫌いで、それが尾を引いている。今回の映画に、カトリックや教会、信者を挑発するような要素はない。バチカンの裏側を題材にした古いタイプのスリラーだ。バチカンはすごく面白い世界だと思うけど、あまり世間に知られていない。

――あなたはカトリック?

いや、違う。

――だから腹は立たなかった。

何かの宗教に反対するような映画にはかかわらない。そういうことには興味がない。この映画の宗教問題についてどう思うか質問されるけど、逆にそれが何なのか誰かに教えて欲しい。

――腐敗した神父が登場するから論争を呼んでいるのでは?

それが論争になるって? 腐敗した神父は最後に当然の報いを受けて、教会の他の人たちは明らかにそんな彼らに対峙している。教会全体が腐敗に寛容なわけじゃない。そこは論争にならないだろう。

――役柄のリサーチはした?

ある程度は。もちろんバチカンは門戸を開いて裏側を見せてはくれない。だからドキュメンタリーで勉強しなければならなかったが、これが退屈だった。バチカンのドキュメンタリーを寝ないで全部見るのは結構難しい。大して役には立たなかった。

でも1人のニュージャージー出身の神父が宗教儀式を演じる際のアドバイザーになってくれて、とても頼りになった。教会やバチカンのこと、それに宗教界の序列に関しても教わった。

――その衣装を着るのは楽しい? 何と言うか、ドレスじゃないよね?

カソック(聖職者が着る足まで達する法衣)だ。面白い制服だよ。着ているとステイタスが上がってみんなの扱いが違ってくる。

――キルトみたいなもの? 下着ははく?

(笑)下にズボンをはく。人生を信仰に捧げた人の制服だから、とても重みがある。この前バチカンの広場で、カソックを着ている人が歩いてきたら、歩き回っていた旅行者がさっと道を空けた。これを着る者にはとても敬意が払われている。

――映画の出演で宗教や精神世界への関心が高まった?

そうでもない。信仰に身を捧げる人物を演じたけど、自分の宗教心は変わらない。

――トム・ハンクスとロン・ハワードは長期にわたって一緒に仕事をしている。疎外感はなかった? いじめは?

(笑)いや。2人は良い関係だよ。親友同士だ。今まで4~5本の映画を一緒にやっているんじゃないかな。

――よそ者扱いされなかった?

全然。2人は俳優全員がやりやすいように気を配ってくれた。現場の雰囲気は良かったよ。

――これまでの出演作でどれが一番気に入っている?

1つは選べない。どの映画も特別だし、それぞれが前作とは違う。ティム・バートンやロン・ハワード、ロマン・ポランスキー、ウディ・アレンといった本当に好きな人たちと仕事をしてきた。

――(スコットランドの)訛りを隠すのは簡単?

いや。他の訛りでごまかすだけだよ。

――他の訛りでしゃべるのは難しい?

色々だけど、ある程度の練習は必要だ。ただ撮影が始まったら、自分のアクセントが役柄のアクセントだと信じて演じないといけない。

――『トレインスポッティング』や『スター・ウォーズ』、そして今回の『天使と悪魔』と話題作への出演が続いたが。

3作だけ? 僕は他にもたくさん映画に出ているよ。

――とても有名な作品に3つも出演しているのは素晴らしい、と思っただけなんだけど。

僕はそうは思わない。役柄を演じて物語を伝えるのが僕の仕事であり、成功したかどうかは重要じゃない。

――ショーン・コネリーのように故郷スコットランドの独立運動に関わっている?

いや。「グレート・ブリテン」でいい。(イギリスの)国家連合はとてもうまく行っているといつも思っているから、運動には関わっていない。

――(スコットランドの伝統衣装でスカートに似た)キルトは着る?

もちろん。結婚式のような特別な機会に。タキシードみたいなものだ。

――靴下にナイフも入れる?

それは「ダーク」。キルトを着るときには絶対身に着ける。腕にダークの刺青も入れている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

トランプ氏の核施設破壊発言、「レッドライン越え」=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中