最新記事

海外ドラマ

『24』を超える宇宙戦争ドラマ

宇宙を舞台に、9.11後の対テロ戦争の暗部や現代人が直面する苦悩をリアルに描き出した壮大なSFテレビドラマ『GALACTICA/ギャラクティカ』

2009年4月22日(水)16時45分
ジョシュア・オルストン(エンターテインメント担当)

現代を映して 舞台は未来だが、愛国心や人権など普遍的なテーマを盛り込んだSFドラマ『GALACTICA/ギャラクティカ』 Film © 2006/2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

 組織的なテロ。逃れようのない戦争。標的の中に紛れ込み、自らの死を恐れない敵――PBS(公共テレビ局)のアルカイダ特集ではない。人間が作り上げた機械生命体との戦争から逃れるため、宇宙船団に乗り組んだ人々が織りなすテレビドラマ『GALACTICA/ギャラクティカ』だ(日本ではシーズン3のDVDがデイライトより09年5月22日に発売)。

 SFとはいえ、この作品ほど9・11テロ後の世界の恐怖感と不透明感、そしてあいまいなモラルをリアルに描いたものはない。その点では、『24』より上かもしれない。なにしろ『24』に登場するテロリストたちは、主人公ジャック・バウアーの拷問にかかれば、簡単に口を割ってしまう。まさに新保守主義者(ネオコン)たちの想像を絵に描いたような敵だ。

 一方の『ギャラクティカ』は、対テロ戦争が人の心に与えるダメージを偽りなく描いている。拷問や人権の制限、愛国精神の意味など複雑な問題も直視する。そして戦争によって守ろうとしているものが、本当に守る価値があるのかという根本的な問いを投げかける。

 物語は機械生命体サイロンが反乱を起こして、人類が滅亡寸前に陥るところから始まる。生き残った人々は、宇宙空母ギャラクティカに乗り組み安住の地「地球」をめざす。

 艦長のウィリアム・アダマ(エドワード・ジェームズ・オルモス)は強硬で、見えない脅威から船を守るためなら個人の自由を犠牲にすることもいとわない。結果的には彼の判断が正しかったことがわかるが、ギャラクティカに乗り組み人々は敵と戦い続けるために払う代償やその価値について、次第に悩むようになる。

 舞台を未来に設定したからこそ、脚本家が考え抜いたアイデアがうまく生かされ、手に汗握るドラマに仕上がっている。現代とはまったく異なる世界を描きつつ、怖いくらい現代を連想させるというSF小説の究極の理想を実現している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中