最新記事

映画

セックスと愛とシングルライフ

本音で生きるヒロインが女性の共感を呼び劇場版も登場したドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』、過激な性描写も売りだが、案外ストーリーは保守的?

2009年4月7日(火)16時52分
ジュリア・ベアード

社会現象 アメリカで1億5000万ドル以上の興行収入を記録した劇場版『SATC』の撮影現場
Brendan McDermid-Reuters

「エキサイティングな体験をなさると思います」と、バスガイドのエミリー・スプロッチ(28)はマイクを通して乗客に語りかける。

 マンハッタンのウエストビレッジを走る観光バスの中、片手を胸に当てて話すスプロッチの口調に真剣さが増す。「泣いてしまう人もいるかもしれません。とても素敵な所です。でも落ち着いて、騒がないようにしましょうね」

 バスが止まり、スプロッチについて乗客たちが降りる。さまざまな年齢の女性たちに、男性の同性愛カップルがひと組。つき合いで女性に連れてこられた男性たちは退屈そうだ。マグノリア・ベーカリーのカップケーキの甘い匂いが漂うなか、彼らはペリーストリートに向かう。

 一行が足を止めたのは玄関ドアの前に階段がついた建物の前。キャリー・ブラッドショーの家だ!

 ここはテレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』の主人公の一人、キャリーが住むマンションとして撮影に使われた建物の玄関。彼女がデートの相手に別れを告げた後でピンヒールの音を階段に響かせたり、男を部屋に招き入れたり、寝る相手を決めたりした場所。ここで彼女は、タバコをふかし、酒を飲み、口論し、泣いた。

 ツアー一行は押し黙って、手早く記念写真を撮りはじめる。立ち尽くして涙を流している人も多い。キャリーは、ファッショナブルでセクシーで自立した独身女性の象徴だ。この「聖地」を訪れる人は毎年、推定5万人にのぼる。熱心なファンはオーストラリアや日本からもやって来る。

 今年5月、映画版『SATC』がアメリカなどで公開されると、大きな注目を集めた(日本公開は8月23日)。『SATC』について、革命や反乱といった言葉を使って熱っぽく語る人も多かった。

『SATC』はもともとテレビドラマとして大ヒット。98〜04年に米ケーブルテレビHBOで放映され、七つのエミー賞を受賞した。200カ国でオンエアされ、現在も多くの地で再放送されている。

 ドラマの放映開始から10年たった今、ヒロイン4人のうち3人は40代、1人は50代に入った。それでも、ファンは増え続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中