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セックスと愛とシングルライフ

2009年4月7日(火)16時52分
ジュリア・ベアード

結婚にこだわるのは女?

 高い評価を得てきた『SATC』だが、本当に革命的な作品だったのだろうか?  新しいタイプのドラマだったのはまちがいない。あけすけで品がなく、「女が独身でいてなぜ悪いの?」と挑発的に問いかける数少ないドラマの一つだった。

 ライターで物事を深く考えるキャリー、弁護士で鋭いウイットの持ち主のミランダ、恋愛至上主義のシャーロット、性的に奔放なサマンサ――4人の主人公が、満足のいくセックスを追求する姿は新鮮だった。勇気づけられる視聴者もいただろう。

 だが実際のところ、このドラマが果たした役割は問題提起だけだった。「女性がシングルでいてもいいじゃない?」という問いに対するドラマの答えは保守的なもの。シリーズ終了時、4人には夫や恋人がいた。映画版でも、キャリーと恋人のミスター・ビッグが結婚するかどうかに焦点が当てられている。

 これはどうみても革命的ではない。作品のテーマは女性が独身で生きることではなく、運命の相手との出会いではないか。

 映画版でもドラマ同様、4人はコミカルで辛辣、ナルシシスティックで、ブランドが大好き。彼女たちは相変わらず固い友情で結ばれている。もっとも、サラ・ジェシカ・パーカー演じるキャリーのすっぴんシーンを除いて、「革命的」な要素はない。

 映画は、4人のうち独身者は1人だけになって終わる。結婚に抵抗を感じるのは男のミスター・ビッグ。結婚にこだわっているのは女だという皮肉な事態に、キャリーたちは気づかない。

 ミランダはドラマの最終シーズンで善良なスティーブと結婚したが、そのスティーブに浮気をされてしまう。この映画に奥行きを与えているのは、夫の浮気に直面したミランダの心の揺れだ。

『SATC』は、女性のアイデンティティーにセックス、愛、男性は不可欠なのかという疑問に答えてくれる作品ではない。それでも、主人公4人のうち1人くらいは、仕事や研究、援助活動などに人生の意味を見いだしてもよかったのではないか。

 女性が愛や性欲について考えだしたのは、はるか昔のことだ。結婚には愛が不可欠だという考えは、18世紀の啓蒙主義の時代に生まれた。以来、結婚の相手や時期に関する選択の幅が広がり、その結果、結婚という制度は不安定になった。

 歴史学者ステファニー・クーンツによれば、1800年代には、ロマンチックな愛への憧れが高まったため、夫選びについて悩む女性が増えたという。「理想的な夫でなかったらどうしよう」という不安に駆られたのだ。

 現代の女性も同じ不安をいだいている。シングルの女性は多くを望みすぎるのだろうか? 

 18世紀には、「惨めな結婚より独身がいい」という言葉が生まれたが、実践する女性はほとんといなかった。結婚しない女性は「オールドミス」などと呼ばれてからかわれたりした。

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