最新記事

インタビュー

大人として生きるのは大変、韓国には「自分一人食わせていくのも手に余る」という言葉もある

2020年12月25日(金)17時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部、翻訳:生田美保

写真:本人提供

<コロナ禍で人間関係に悩む人が増えているが、韓国のベストセラーエッセイ『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。』の著者、ダンシングスネイルは「ただ大人になるだけでも立派」と話す。人との距離感をどう取ればいいか、この息苦しい時代にどう生きていくべきか>

新型コロナウイルスの感染拡大によるライフスタイルの変化で、人間関係のストレスを感じる人が世界中で増えている。

外出自粛、テレワークが推奨されている今、職場や家族、友人や恋人とのコミュニケーションをどう取ったらよいか分からないという声も多い。

そんな悩みを抱える人たちのヒントになるかもしれない書籍が『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。』(生田美保訳、CCCメディアハウス)だ。

「人間関係エネルギーが底をついた人」に向けて書かれたこの本は韓国で、発売2カ月で10刷と瞬く間にベストセラーになった。

著者は『死にたいけどトッポッキは食べたい』(ペク・セヒ著、山口ミル訳、光文社)ほか、多くのベストセラー書籍の表紙や挿絵を手掛ける人気のイラストレーター、ダンシングスネイル。

無気力感や不安感と折り合いをつけながら、うまく生きていくための心のあり方を紹介した前作『怠けてるのではなく、充電中です。』(生田美保訳、CCCメディアハウス)は多くの読者の共感を集め、日本でも8万部を超え売れ続けている。

人との距離感がテーマの今作について、人間関係のあり方やウィズ・コロナの時代、私たちはどう生きるべきかを著者に聞いた。

――前作と今作の違い、ダンシングスネイルさん自身の書いているときのマインドの変化について教えてください。

前作と今作の素材となったアイデアは、いずれも似たような時期に書いた日記がその始まりです。

でも、本格的な執筆作業をした時期には隔たりがあって、最初の本を書いていた当時は、無気力症から脱して、普通の生活に近づこうとしていた時だったので、私だけの特殊な感情に意識を向けて書きました。

だから、極度に内向的な性格だったり、無気力とうつに悩まされている読者の方たちの共感を得やすかったと思います。

それから1年後に今回の本を書き始めた時は、うつを少しずつ克服していく中で心が少し楽になり、視野も広くなっていました。

それで、自分だけでなく周囲の話にも関心を持って、素材として使うことができました。結果的により普遍的な心を扱った話を書くことができたと思います。

――ダンシングスネイルさんにとって「大人」とはなんでしょうか。

この本に「オトナになるっていうのは他人の立体的な姿を発見して受け入れていくこと。」(86ページ)という文章があります。もっと正確に言えば、それが「よい大人」の目指すべき姿だと思います。

「私も正しいし、あなたも正しい。だから共に歩んでいける方法を模索してみよう」。こんなふうに他人を理解する幅を広げていけたら、一番いいですね。

dancingsnail20201225-illustration1B.png

『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。』86ページより

でも、私たちは「よい」大人にまでなる必要があるでしょうか。ただ大人になるだけでも立派です。そんな脈絡から「大人とはなにか」と聞かれたら、自分の選択に責任を持てる人だと思います。

ほとんどの人たちにとってはそれさえも易しいことではない、ということに、たぶん皆さん共感されるでしょう。

韓国では「自分一人食わせていくのも手に余る」という言葉で、大人として生きることの大変さを表現することがあります。

その大変なことをしている私たちみんな、立派な大人だと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ワールド

カンボジアとの停戦維持、合意違反でタイは兵士解放を

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中