最新記事

株の基礎知識

日本株を影で大量保有 日銀のETF買入れが株価に与える影響とは?

2020年11月10日(火)11時15分
宇佐見聖果 ※株の窓口より転載

gyro-iStock.

<日銀が購入しているのは個別株ではなく「上場投資信託(ETF)」。市場株式の5.5%を実質的に日銀が保有しており、その動向を知っておくことが大切だ>

市場への影響度合いを高める日銀

株式投資においては、各投資主体の動向を頭の片隅に捉えておくことも大切になります。投資主体の動向が株価のうねりを伴う場合があるからです。

近年の投資主体比率をみてみると、海外投資家がおよそ70%、個人25%、法人10%、証券会社1%程度というところで推移しています。海外投資家の比率が圧倒的に高く、海外から日本市場がどのように判断されているかが近年の株価動向に大きく影響を与えていることがうかがえます。

そんな投資主体の中でも注目したいのは日本銀行です。

■日銀はどれくらい株を保有しているのか

日銀が購入しているのは個別株ではなく「上場投資信託(ETF)」です。その名のとおり、一般の投資信託と異なり、ETFは市場に上場している投資信託で、誰でも自由に購入できるものです。これを日銀は、信託銀行に委託して購入しています。

では、日銀は現在どの程度のETFを保有しているのでしょうか。買付残高は、日銀が決算ごとに公表しているバランスシートの内訳で確認することができます。2019年3月末の決算資料から確認できるETF残高は25兆円、2020年3月末では約30兆円に達しています。

この2020年3月末の全市場における株式時価総額は548兆円ですが、そのうち30兆円を日銀が保有しているわけなので、実に、市場株式の5.5%を実質的に日銀が保有していることになります。

日銀はETFの購入を信託銀行へ委託しているため、名目上の投資主体は信託銀行(法人)となります。もちろん、日銀が株主として表記されることも一切ありません。そのため、「影なる存在」として市場への影響度合いを着実に高めている投資主体、それが日銀なのです。

なぜ日銀は株を購入するのか?

日銀によるETF購入は、1980年代後半のバブル崩壊後のデフレ脱却を目的に始動し、以後、形を変えながら未だに継続している、金融緩和政策の一環として行われているものです。

そこに至る経緯をたどってみましょう。

■バブル崩壊からゼロ金利・国債買入れへ

戦後復興を経て成長を続けていた日本経済でしたが、1990年代を目の前にバブルが崩壊。社会は一気に消費抑制に傾き、デフレが到来します。戦後初のピンチといえる状況に、中央銀行である日銀が金融政策を掲げ、動き出すこととなりました。

当初は、金融政策手法としてはオーソドックスな、短期金利を下げる方法が採用されました。しかし、デフレ状態からの回復の兆しはなかなかみえてきません。金利は段階的に下げられ、ついに1999年には実質的な「ゼロ金利政策」へ突入します。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

EU、ウクライナ支援で2案提示 ロ凍結資産活用もし

ワールド

トランプ政権、ニューオーリンズで不法移民取り締まり

ビジネス

米9月製造業生産は横ばい、輸入関税の影響で抑制続く

ワールド

イスラエル、新たに遺体受け取り ラファ検問所近く開
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 6
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 9
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中