「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談
「国ごと」の政治事情や商習慣に寄り添う
平戸 ケニアの案件は、かなり苦労したと伺っています。
オタイべ はい、私が入行する前から始まっていた案件で、最初に相談を受けてから融資契約締結まで7年7カ月を要しました。JBIC側の担当者もこれまでに複数名交代していて、私はそのラストスパートの部分を引き継いだ形です。案件承諾まで時間を要した理由の1つがケニア政府の政権交代でした。
平戸 これもアフリカ特有の事情かもしれませんが、大統領選挙は案件を進める上で、対応に注意が必要な時期でもありますよね。すべてが一度リセットされるような場面は、なかなか厳しいものがあります。
私が担当した2023年の太陽光発電事業と小学校向けランタン電化事業への融資は、JBICとして初のベナン向けプロジェクトであり、「GREEN(地球環境保全業務)」の枠組みの下で初めてアフリカ政府向けに実施した案件でした。ここでも、許認可プロセスで何度もやりとりを重ねるなど、同様に時間と労力のかかるプロセスを経験しました。
森岡 担当者が変わるという点も含めて、大統領選挙後の3〜4カ月間は、業務がまったく進まなくなることもあります。実際、コートジボワールでも今年10月に大統領選を控えており、その時期に交渉が重なるとスケジュールが破綻するのは明らかでした。この点を相互認識し、アフリカ基準ではかなり急ピッチで案件が進んだのですが、同国の財務官僚の方々が非常に優秀で、大きな助けとなりました。
現地の実務部隊の方々にJBICの役割を理解してもらう際にも財務官僚の方々がうまく橋渡しをしてくださり、スムーズに進めることができました。
平戸 23年の案件に続き、現在もさらなる協業案件について協議を続けています。すでに荒波に揉まれてきた経験があるからこそ、今後はより現地にとってもメリットの大きい提案やアプローチができるのではないかと考えています。
一方で課題と感じるのは、JBICがアフリカ案件にも積極的に取り組んでいることや、日本企業の活動を支援する多様な金融メニューがあることが、十分に認知されていない点です。アフリカにおける事業展開には高いポテンシャルがあることを、より多くの日本企業に実感してもらえるよう、JBICの取り組みを広く発信し、実績を積み重ねていきたいと考えています。
ベナン、アルジェリア、そして昨年のCOP29(第29回気候変動枠組条約締約国会議)の際に覚書を締結したモロッコでのプロジェクト実現に向けて、アフリカ担当者として着実に追いかけていくつもりです。