最新記事
座談会

「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談

2025年9月11日(木)10時40分
※JBIC Todayより転載

アフリカ進出「まだ検討段階」では遅すぎる

オタイべ 課題感という点では、日本全体として、アフリカ進出に関しては他国と比べて慎重すぎる面があるように感じています。アジア諸国を見ても、中国やインドはすでに一定のプレゼンスを築いていますし、韓国も重要鉱物資源の確保を主眼にアフリカ向けの取り組みを強化していると聞きます。さらに最近では、インドネシアもアフリカとの経済関係強化を目的としたフォーラムを開催するなど、関与を活発化させています。

そうした動きを見ていると、「まだ検討段階」では遅すぎるのではないか、今を逃せば完全に出遅れてしまうのではないか、という危機感を抱いています。だからこそ、私自身もJBICでの業務を通じて、できるだけ多くの日本企業がアフリカに関心を持ち、動けるように働きかけていきたいと思います。いずれはナイジェリアの案件にも関わっていきたいですね。

森岡 個人的な感触ですが、日本企業が関心を持ち始める2年ほど前のタイミングで、欧州ではすでに注目され始めている国があるんです。日本側がまだ二の足を踏んでいる間に、フランス系の企業などでは「もう進出していい」という判断が出ているようなケースですね。そうした国に早い段階で目をつけて、キーパーソンの特定や関係構築に取り組み、いずれ日本企業が進出する際の初動がスムーズになるよう下地を整えておく。それは、パリという場所にいるからこそできる大切な役割だと感じています。

TICADを発射台として、覚書にとどまらずアフリカとの関係を多角的かつ深く発展させていく。その一助となれるよう、静かにではありますが熱い気持ちで取り組んでいます。

急成長を遂げるモロッコの商都カサブランカ。再生可能エネルギーやインフラ整備では日本の知見が生きる場面も

急成長を遂げるモロッコの商都カサブランカ。再生可能エネルギーやインフラ整備では日本の知見が生きる場面も


JBICパリ駐在員事務所 駐在員 森岡隼也JBICパリ駐在員事務所 駐在員
森岡隼也(もりおか・じゅんや)

2019年入行。電力・新エネルギー第1部へ配属。経営企画部を経て23年9月よりパリ駐在員事務所に赴任。コートジボワールをはじめ、サブサハラアフリカにおける案件組成・管理を担当。東京大学教養学部卒業

JBICパリ駐在員事務所 駐在員 戸 瞳JBICパリ駐在員事務所 駐在員
平戸 瞳(ひらと・ひとみ)

2022年入行。エネルギー・ソリューション部にてアフリカ政府向けの案件に従事。24年8月にパリ駐在員事務所に赴任、フランス語圏アフリカ諸国向け融資担当。早稲田大学政治経済学部卒、パリ政治学院メディアコミュニケーション修士

JBIC資源ファイナンス部門 鉱物資源部 係員 オタイベ ジェニファー舞JBIC資源ファイナンス部門
鉱物資源部 係員
オタイベ ジェニファー舞(おたいべ・じぇにふぁーまい)

2023年入行。鉱物資源部にてアフリカ諸国の地場金融機関を担当。直近はケニアのメネンガイ地熱発電プロジェクトを担当。慶應義塾大学法学部卒業

※当記事は「JBIC Today」からの転載記事です。
「JBIC Today」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EU、35年以降もエンジン車販売を容認する制度検討

ビジネス

日経平均は続落、5万円割れ AI関連株の下げが重し

ワールド

SNS情報提出義務化、米国訪問に「委縮効果」も 業

ビジネス

三菱UFJFG社長に半沢氏が昇格、銀行頭取は大沢氏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中