最新記事
無理ゲー

「とりあえずやってみる」は絶対NG...幹部や先輩からの「的外れ」アドバイスの正しい対処法

2024年6月5日(水)11時22分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


  
ここで有効になるのが、「難易度×コスト」「成果が出るまでの時間×成果の大小」といったような、ある一定の軸のマトリクスで考えること。この軸の文言は、「コスト」でも「工数」でも「心理的ハードル」でも何でも構いません。
  
たとえば、新規の営業先が足りなくて困っているとします。すると、隣の課の課長が「紹介をもらうためには、お客様とゴルフに行ったり、飲みに行ったり、いかに時間をともにするかが重要だよ」とアドバイスしてくれました。

しかし、あなたは今、SNSを使ったマーケティングに取り組んでいて、ゴルフや飲み会に参加している時間はありません。
  
ここで効いてくるのは、「成果が出るまでの時間」という評価軸です。アドバイスをもらったら、「そうですよね。それって、アクションしてからどのぐらいのスパンで変化出ますかね? このマトリクスだとどのぐらいの位置になります?」と聞いてみてください。「そりゃ、すぐにってわけにはいかないよ」と返ってくるでしょう。

『中間管理職無理ゲー完全攻略法』内の図版

『中間管理職無理ゲー完全攻略法』160ページより

そこで、「積み重ねですよね。ありがとうございます。実は今、こういう施策を考えていまして......」と切り返すのです。

その時、成果が出るまでのタイムラグや難易度、コストを軸に、マトリクスへプロットして見せてみてください。アクションの有効性を視覚的に捉えることができ、説得力が増します。
  
視覚的に情報を整理することで、「今、実はそんなに予算ないんですよ」「うちの部署でこんなアクションに取り組んでいて、そこに時間とお金を使っているんです」と、自分たちの状況も伝えることができます。

そして、もらったアドバイスに対しても、全体から見た位置付けを俯瞰でき、その有効性(あるいは無効性)が明確になります。

「今取り組んでいるこの施策が終わったタイミングで、もう一度相談させていただいてもいいですか?」という形で尋ねれば、その上司の顔も立てることができます。
  
上司や先輩からのアドバイスだからといって、すぐに手をつけなければならないわけではありません。そんなことをしていたら、すぐにパンクしてしまいます。

だからといって、「あれ、どうなった?」と尋ねられた時に、「まだ手をつけていません」ばかりではいけません。アドバイスをただ無視していると、上司はその後、さじを投げるでしょうし、あなたに有益な情報をくれることもなくなるでしょう。
  
現状の取り組みをマッピングし、目に見える形で状況を伝えることで、一方的なアドバイスではなく、さまざまな条件を考慮したアドバイスをもらえるようになります。


中谷一郎
大学卒業後、ベンチャー・リンク社を経て2010年にトリノ・ガーデンを設立。サービス業を中心に、建設、小売、メーカーなど幅広い業界における大企業の収益・生産性改善を、「オペレーション分析」を通じて実現してきた。その手法の特徴は、徹底的に現場の様子を「可視化し計測し記録する」こと。近著に『オペレーション科学』(柴田書店)がある。


newsweekjp_20240527061905.jpg

中間管理職無理ゲー完全攻略法
 中谷一郎[著]
 CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EUに8月から関税30%、トランプ氏表明 欧州委「

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 8
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中