最良のフォーメーションとは? サッカーに学ぶ「人事戦略の極意」8カ条

WHAT CEOS CAN LEARN FROM THE WORLD CUP

2023年1月12日(木)14時45分
ボリス・グロイスバーグ(ハーバード・ビジネススクール経営学教授)、サーシャ・シュミット(WHUオットー・バイスハイム経営大学院スポーツ経営センター長)、アブヒジット・ナイク(ファンドフィーナ社リスク・データ責任者)、ハリー・クルーガー(バイエルン・ミュンヘン戦略・事業開発担当)

■チャンピオンシップを制するディフェンダー

敵の攻撃をかわし、押しとどめるという意味で、センターバックが最も大事だと主張する専門家も多い。

センターバックはゴールキーパーと残りのチームの架け橋。「彼らは最後の砦(とりで)だ」とクロップは言う。「センターバックがボールを奪われたり攻撃を的確に食い止められなかったりすれば、対戦相手に大きなチャンスをくれてやることになる」

センターバックは往々にしてチームのリーダー格で、主将を務める確率もほかのポジションより高い。
一方、チームの要はサイドバックだという証拠もそろう。

W杯で史上最多5回の優勝経験を持つブラジルは02年大会優勝の立役者となったカフーおよびロベルト・カルロスや、レアル・マドリードを3年連続でチャンピオンズリーグ優勝に導き一時代を築いたマルセロら、超一流のサイドバックを輩出してきた。サイドバックは攻撃に積極的に参加し、ストライカーをマークするのはセンターバックに任せて広いスペースをカバーする。

19年にUEFAチャンピオンズリーグで優勝したリバプールのトレント・アレキサンダー・アーノルド(右サイドバック)とアンドリュー・ロバートソン(左サイドバック)が、同年のプレミアリーグにおけるアシスト数ランキングで3位と5位につけたのも不思議ではない。

■ミッドフィルダーは攻撃の「エンジン」

守備的ミッドフィルダーはしばしば攻撃の「エンジン」となり、チームのまとめ役も果たす。

女子サッカークラブ、ポートランド・ソーンズのマーク・パーソンズ監督は16年、フランス代表にして女子サッカー界が誇る守備的ミッドフィルダーのアマンディーヌ・アンリを「彼女が中盤で試合をコントロールするから、チームはよりよい仕事ができる」と称賛した。

守備の面ではボールを支配し、一対一の競り合いに勝ち、潜在的なパスコースを遮断することが求められるポジションだ。

■ストライカーこそMVP

最重要ポジションと言えばストライカーという世間一般のイメージは正しいのだろうか。確かに、選手個人に贈られる賞を獲得しているのはほとんどがフォワードだ。

国際サッカー連盟(FIFA)が年に1回選ぶ男子サッカーの最優秀選手にしても、1991年に表彰が始まって以来、たった1人の例外(ファビオ・カンナバーロ)を除けば攻撃的ミッドフィルダーかフォワードばかり。同じことは女子にも当てはまる。01年に賞が創設されて以降、守備部門で最優秀選手に選ばれたのはゴールキーパーのナディネ・アンゲラー1人だけだ。

成績をはじめとするさまざまな要素から選手の「市場価値」を算出したランキングを見ても、上位にいるのは多くがフォワードだ。同じことは、米フォーブス誌のアスリート長者番付にランクインするプロサッカー選手にも言える。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中