最新記事
経営

最良のフォーメーションとは? サッカーに学ぶ「人事戦略の極意」8カ条

WHAT CEOS CAN LEARN FROM THE WORLD CUP

2023年1月12日(木)14時45分
ボリス・グロイスバーグ(ハーバード・ビジネススクール経営学教授)、サーシャ・シュミット(WHUオットー・バイスハイム経営大学院スポーツ経営センター長)、アブヒジット・ナイク(ファンドフィーナ社リスク・データ責任者)、ハリー・クルーガー(バイエルン・ミュンヘン戦略・事業開発担当)
アルゼンチン代表, ワールドカップ

ポジションやフォーメーションからサッカーを見れば経営のヒントに(2022年12月、カタールW杯優勝の喜びに沸くアルゼンチン代表) PAUL CHILDSーREUTERS

<スター選手は重要だが、彼らを輝かせるにはチーム全員に適材適所がある。ドイツ1部リーグのデータを分析して判明した、チーム編成に活かすコツ>

人材こそがわが社にとって最大の競争力だ──。

企業では中堅管理職から人事担当、CEO(最高経営責任者)までもが、こんな決めぜりふを口にしたがる。

もっともらしい言葉だが、問題が1つ。真実ではないのだ。

企業の「スター選手」は確かに競争力の源だが、彼らを輝かせるには最も重要な役割を割り振らなければならない。仕事をそつなくこなすだけの社員は競争の切り札にはならないし、一流の人材を重要度の低い役割に就けるのは才能の無駄遣いになってしまう。

適材適所を実現したいなら、経営者は全体の戦略を立ててから人事を考えたほうがいい。今後5年間でどんな戦略を取るつもりなのか。それを遂行するのに不可欠なポジションとは何なのか。人事を決める際は、業績に関するデータを基に、できるだけ客観的に判断するべきだ。

そこで格好のヒントになるのが、ワールドカップ(W杯)の熱狂も記憶に新しいサッカー。11人で構成されるサッカーチームは、優秀な経営チームとも規模が近い。どのポジションも大事だが、成功をつかむ上でより重要なポジションはあるのだろうか。1つずつ見ていこう。

■勝利をつかみ取るのはゴールキーパー

ピッチで最も重要なのはゴールキーパーだとする声は多い。

例えば2018年に英リバプールがローマに6500万ポンドの移籍金を払って獲得し、当時史上最も高価なキーパーとなったアリソン・ベッカー。彼は19年の欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグでナポリを下しリバプールを決勝トーナメントに進出させるなど、史上最高の移籍金に見合う活躍を見せた。

この年リバプールはチャンピオンズリーグで優勝。ユルゲン・クロップ監督は「こんなにできる選手と知っていたら、倍の金額を払ってもよかった」とベッカーを絶賛した。

キーパーはどのポジションよりもメンタルの強さが試される。出番のない時間もあるが「チームの運命を背負う瞬間を試合中に何度か経験する」と女子W杯元アメリカ代表のキーパー、ブリアナ・スカリーは言う。

シュートを決めさせないのが主な仕事だが、チームによってはスイーパー(ディフェンダー)も務める。14年のW杯ではマヌエル・ノイアーがスイーパー=キーパーとして、ドイツの優勝に貢献した。時には攻撃の起点となり、中には「キーパーこそが攻撃の一番手だ」と言い切る元イタリア代表ティアゴ・モッタのような選手もいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界

ワールド

イスラエル、新休戦案を提示 米大統領が発表 ハマス

ビジネス

米国株式市場=ダウ急反発、574ドル高 インフレ指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「精密」特攻...戦車の「弱点」を正確に撃破

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 5

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 6

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 7

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 8

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 8

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中