最新記事

SDGs

「無意識的な偏見」が、社会の活力と成長を阻害する...企業が多様性を推進する理由

2022年12月16日(金)16時47分
西田嘉孝

「多様性を認めようという世の中になっている中で、社会で男女が活躍できる機会はまだまだ平等ではないし、賃金の格差も無くなりません。そうした問題の背景にあるアンコンシャス・バイアスを排除するため、当社では全世界の社員に向けて外部の専門家と連携した研修を行い、性別や特性に関わらず優れたパフォーマンスをした人がきちんと評価される人事制度の確立を進めています」

DE&Iを実現するため、アメックスが行っている投資は約40億ドル。社内外の環境整備に同社がそれだけの投資をする理由を、津釜氏は「社会に対してポジティブなメッセージを発信する役割を担うため」と説明する。

世界180カ国以上でクレジットカード事業やペイメントサービスを展開する同社は、ビジネスを通じて多くの企業や消費者とのタッチポイントを持っているため、社会をより良い方向に変える影響力も発揮できる。そこで、社会や組織のあるべき姿を自社が率先して示すことで、それがポジティブなメッセージとして社会に広く伝わると考えているのだ。

挑戦する女性起業家たちの課題を埋める試み

さらにアメックスは、より多様で公正な社会の実現を目指して、社外への直接的な取り組みも始めている。その1つに、グローバルでは2010年から続く「ショップスモール」がある。もともとはリーマンショックによる経済の低迷を背景に、「街のお店(=スモールショップ)」の支援を通じて地域の活性化を目指す活動としてアメリカでスタート。その後に世界各国へと活動が広がり、日本では2017年から加盟店でのキャンペーンなどを展開する取り組みが始まった。

そして2022年には「ライズ・ウィズ・ショップスモール」を初開催した。これはスモールショップのオーナーが直面する課題の解決や、新たな挑戦を支援することで、街全体の活性化と多様化を後押しすることを目指した参加型企画だ。

221208di_lcr03.JPG

11月24日に実施された「ライズ・ウィズ・ショップスモール」授賞式(アメリカン・エキスプレス)

初回となった今年は、女性ショップオーナーにフォーカスし、全国の応募者から13名を選出。上限200万円の特別支援金、または先輩女性経営者をメンターとする課題解決に向けたアドバイスを約2カ月間にわたり提供するプログラムが実施された。アメックスの独自調査で明らかになった、「経営ノウハウや情報発信術の不足」という女性ショップオーナーの課題に着目して生まれた日本独自の支援プログラムだ。

11月24日には、アメリカン・エキスプレス東京オフィスにおいて授賞式を実施。同プログラムの企画・運営を担当した津釜氏が13名の受賞者一人ひとりに表彰状を手渡し、その後はそれぞれのショップの紹介や起業に至ったストーリーなどが受賞者から語られた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EU、自動車業界の圧力でエンジン車禁止を緩和へ

ビジネス

午前の日経平均は続落、米雇用統計前の警戒ムード 一

ビジネス

経済同友会の代表幹事に山口・日本IBM社長、新浪氏

ワールド

台湾総統、財政関連法改正に反対 野党主導の議会と溝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中