最新記事

コンビニ

セブン-イレブン「加盟店の乱」の影で一変した本部の態度 業界全体でも時短営業が拡大

2022年7月18日(月)14時20分
中野大樹(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載

コンビニ本部と加盟店との関係は改善に向かいつつあるとはいえ、課題はまだ残る。その本丸とも言えるのが、加盟店が本部に対して支払うロイヤルティー比率の引き下げだ。

コンビニチェーンでは一般的に、店舗の売上高から商品などの仕入れに伴う売上原価を差し引いた売上総利益をコンビニ本部と加盟店で分け合う。売上総利益に一定割合を乗じたロイヤルティーを加盟店は本部に支払う。

セブン本部に支払うロイヤルティー比率はもっとも一般的な契約タイプで約60%と、競合他社と比べ高い水準だ。さらに売上総利益が増えるほど、累進課税のようにロイヤルティー比率は上がっていく。

加盟店オーナーを45年間続けたという首都圏の男性は「長く続けた店舗であればロイヤルティーの減額があるため利益も出た。2店舗のうち、古いほうの店を閉店したことでロイヤルティーの金額が上がって、人件費を抑えないと利益が出なくなった。最後はずっと赤字だった」と語る。

ロイヤルティー改革にどこまで踏み込むか

こうした加盟店経営の苦境は、人手不足の原因の一つにもなっている。一定の利益が確保できれば、人気がない深夜スタッフも高時給での募集が可能になるが、近年の最低賃金の上昇傾向が店舗経営を圧迫。人件費は原則としてオーナーが全額負担するため、さらに高時給を提示しようとすると、オーナーの取り分は減るばかりだ。

元コンビニオーナーで社会保険労務士の齋藤晃人氏は「従業員の社会保険料を支払っていないオーナーも多い。支払わないのは問題だが、支払えないほどロイヤルティー負担は重い」と指摘する。

セブン本部は、店舗の運営期間や複数店経営など特定の条件下でロイヤルティー比率を軽減する制度を導入してきたが、基本となるロイヤルティー比率そのものの見直しには手を付けていない。

今後も人件費や光熱費などのコスト増が予想される中で、長年変わることがなかったロイヤルティー改革にどこまで踏み込めるのか。セブン本部には、加盟店と向き合う本気度がいま一度問われている。

中野大樹(なかの たいじゅ)

東洋経済 記者
大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。


※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏のミサイル防衛システムへの関与で調査要請=

ビジネス

丸紅、自社株買いを拡大 上限700億円・期間は26

ワールド

ウクライナ協議の早期進展必要、当事国の立場まだ遠い

ワールド

中国が通商交渉望んでいる、近いうちに協議=米国務長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中