最新記事

サプライチェーン

貨物船不足で解体前の老朽船賃料まで高騰 世界的インフレ助長も

2022年6月26日(日)16時39分

2人の船舶ブローカーが提供したデータによると、現在カリフォルニア州と中国の間を航行している貨物船「ナビオス・スプリング」は1月に3年の定期用船契約が結ばれ、用船料は1日当たり6万ドルと2年前の同8250ドルのおよそ7倍になっている。

船籍がマーシャル諸島の本船は07年の建造で、最初の船主の取得価格は4200万ドル。一方、今の3年契約で得られる収入は6570万ドルだ。

海運業界は大もうけ

海運業界は今年第1・四半期の利益が593億ドルと、前年同期の191億ドルを大きく上回った、と専門家のジョン・マッカウン氏は話す。同氏はロイターに「海運会社は勝ち組で、彼らの大幅な増益はコンテナで運んだ全ての商品の価格上昇によって生み出されている」と説明した。

世界第2位の海運会社マースクは第1・四半期が過去最高益となり、売上高も55%増えて193億ドルに達した。今年の利払い・税・償却前の利益見通しは300億ドルに上方修正されている。

専門家によると、大手海運会社の一部がこうした利益をつぎ込んでいるため貨物船の価格が高値で推移し続け、運賃高騰と将来のインフレを助長することになるという。

いつ潮目が変わるか

クラークソンズのデータを見ると、昨年売却された中古コンテナ船は過去最高の503隻で、世界の総数の7%相当だった。今年1-5月でも108隻が売却された。

世界の海運最大手メディタラニアン・シッピング・カンパニー(MSC)は20年8月以降で200隻の中古コンテナ船を購入している。

クラークソンズは、今年解体されているコンテナ船はゼロのため、17年の時点で11年だった世界のコンテナ船の平均船齢は13.9年に延びたと明らかにした。

それでも、主要企業が発注した巨大新造船の多くが就役する来年ないし2年後には、貨物船需給ひっ迫局面は終わりを迎える可能性がある。

世界海運協議会(WSC)のデータでは、昨年発注されたコンテナ船は計555隻、総額425億ドルと過去最高を更新。今年これまでにも208隻、総額184億ドルの注文が出ている。

これら新造船の幾つかは過去最大クラスで、全長は400メートルと昨年スエズ運河で座礁事故を起こした「エバー・ギブン」に匹敵する。マースクはロイターに、昨年同社が発注した12隻は、この記事の冒頭で紹介した「シナジー・オークランド」の4倍近い大きさだと説明した。

ゼネタのチーフアナリスト、ピーター・サンド氏は、港湾施設やサプライチェーンがパンデミック以前のように機能すれば、次々に就役する新造船が海上運送コストを押し下げてもおかしくないとの見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルとヒズボラが交戦、ガラント国防相は夏の攻

ビジネス

米の対中投資規制、年内に策定完了へ=商務長官

ビジネス

ネット証券ロビンフッド、第1四半期は黒字転換 仮想

ビジネス

独プーマ、第1四半期は売上高が予想と一致 年内の受
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中